劇場公開日 2019年12月6日

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幸福な囚人のレビュー・感想・評価

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4.0サイコパス天野監督作品をツッコミながら楽しもう!

2024年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

もうね、天野監督作品にフツーとか常識を当てはめちゃいかんね。

冒頭、男性が逮捕されるんだけど、工場に制服姿の警官がやってきてダイレクトに拘置所まで連れて行くのよ。んで工場で働いていた姿まんまで収監されるの。
フツーに考えればスーツ姿の刑事さんが逮捕状持ってやってくるんだろうけど天野ワールドではそんな常識は通用しない。

もうこの我々の常識の通用しないトンデモオープニングから期待値が爆アガリです!
本作はもう最初っから最後までツッコミどころのオンパレードで楽しませてくれます。

几帳面な旦那さんが着替えもせずに帰ってくるなりテーブルについて食事を始めたり、戸棚にしまう前の食器を拭いてないとキレて缶詰で美人妻の指を叩いたり。
戸棚にしまうときに拭くのなら理解できるけど、なぜか戸棚でなくシンク台にそのまま食器を置くのよね。
妻と元同僚なんだから妻の仕事も知ってるだろうに分かりやすく怪我させる几帳面なはずのの旦那様。
この美人妻が劇中では二着の服をひたすら着回す。職場でも家でも同じ服でいらっしゃる。

そんな感じでとにかく「常識的に考えてこうだろ」なんてのが一切通用しない映画!
もう楽しくて仕方がない。

主人公の家の台所道具がなぜか全部昭和。冷蔵庫も開きっぱなしの炊飯器も、どっから持ってきたんだろ?ってくらい今どき見ないタイプ。何か意味があるのかな?と思ったら終盤で炊飯器が変わっちゃってるし!

虐待されて育ったらしい割には人にやたら優しい主人公。でも仕事できないみたい。
仕事できない描写が30センチ書類を遠くに置くからとか言う理由。でも30センチ離れた書類を取るのの30秒かかるらしい。
昼食の時間を惜しんでデスクでのびたカップラーメン食べてたら、普通なら仕事バリバリ忙しく頑張ってる人に見えるだろうに、天野作品では仕事ができず奥さんにも弁当作ってもらえないクズってことの描写になるらしい。

仕事遅いと文句言われたすぐ後に奥さんから電話かかってきて「今日は早めに帰る」とか言っちゃうし。

ちなみにこの職場にもう結構前からいるベテランなはずの美人妻もなぜか仕事ができない設定。

スーパーで奥さんが自殺未遂して、なぜか連絡先がわかった旦那に電話だけかかってきて、着いてみたら売り場で血を流して倒れてんの。
誰にも介抱されず、警察も呼ばず救急車も呼ばず血を流したままほったらかしで、旦那が来たらお客さんたちスマホで撮り始めるの。

あと主人公の家がどうもかなり広い庭付きの恐らく都内の一戸建てなのよ。
んで心病んでる奥さんと二人暮らしでなぜか同居してない母親から電話が来る。
この虐待された思い出のある広大な一戸建てを売って、奥さんの療養をしながら働きやすい職場を探そうなんて発想はこの主人公と天野監督にはないらしい。なもんでしょっちゅう自殺未遂を繰り返す奥さんはいつも独りぼっちで自宅待機。

もうね、なんてゆーかツッコミというか、あまりにも社会的通念とか常識とか合理的発想とかけ離れすぎてもうお腹いっぱいになっちゃう。
最後の方でちゃんと逃げずに順番に襲われてくれる人々なんて、昔のホラー映画のオマージュなんかな?とか思っちゃう。
フツーなら警備員呼んだりサスマタ使うんだろうけどね。
あとスマホ上下逆にもって話したり。

アマプラの作品紹介読めばだいたいのストーリーとオチまで読めちゃう。あらすじだけ読めば普通に楽しそうなのが天野監督作品!
最近は是枝監督作品とかリアルすぎて現実のことのように感じてしまう作品もあるってのに、アニメでさえ今は相当設定を詰めに詰められた作品があるってのに、天野監督作品には時代と真逆を行く楽しさと中毒性のある魅力がありますねえ。

天野監督はたぶん宇宙人かサイコパスか厨二病で、あまりにも現実世界とかけ離れた内容で我々を楽しませてくれるけど、監督自ら作曲される音楽も美しいんですよねえ。

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よんしん

2.0どうしても入り込めない辛さ。

2020年8月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

B級から更に潜ったアングラ感が結構辛かった。更に胸糞。他人に見せる為の幸せに何の意味があるのか?ってのは刺さった。

商業映画を撮ったつもりは無いから。って監督は言うだろうなぁ、って言う気がします。が、中途半端な濡れ場の連続に、映画製作の難しさも滲んでる気がしてしまいました。

いずれにしても、職場のシーンが長すぎて。男のトラウマ描写に、もっと時間を割いた方が良いのではないかと思いました。

木嶋のりこ、結構好きなんですけど。微妙どしたw エロ可愛く復活することを待ってます。

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bloodtrail

2.5無表情の向こう側

2019年12月13日
Androidアプリから投稿

悲しい

怖い

心を病んだ妻に寄り添う口数が少なく気弱な男が心にハンマーを抱えていく話。

マウントの取り合いと陰口の絶えない生産性が低い腐った会社で働く主人公。
残念ながら仕事があまり出来る感じはしないものの、彼だけは腐った行動をしない中、同い年でパキパキの男が配属されてきて、交流し発破をかけられていく展開。

会社以外の描写でも強烈な力関係の描写をみせていき、その上発破というには強烈なモノを被せて来られて、みている側もどんどん陰鬱な気持ちになっていく。

幻視幻聴の描写も増えていき、何が現実かわからなくなって来たところで、まさかの展開にまさかの真実。

オープニングの描写から結末はわかってしまったし、起伏の小ささと描写のマイルドさや荒さに物足りなさあったけれど、ストレスと不快さはなかなか好みだった。

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Bacchus

5.0狂気の果てに残るもの

2019年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ぼくらが普段感じている苛立ちや違和感。つつがなく社会を渡り歩くために仮面をかぶって生きるオトナという生き物。狂気と暴力に満ちた作品だけど、自分に嘘をつきたくないと願う主人公の心情に寄り添って観ることができれば、現代版「ライ麦畑」として観ることもできる。血塗れで悪意に満ちていてネガティブで居心地の悪い物語をただいたずらに嫌悪するのではなく、その狂気の果てに垣間見えるものを是非感じ取ってほしいなと思う。世界は混沌としてままならないものだから、そのなかで生きていくために、本当に必要なものはなんなのかを。

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しん