劇場公開日 2019年7月26日

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「あまりにも繊細な映画」よこがお andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あまりにも繊細な映画

2019年7月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

深田晃司監督のミューズは筒井真理子なんだな...と。
何が悪い、誰が悪い、と言い切れない。登場人物にあるのは明確な悪意ではなく、優しさ、躊躇い、激情、怒り、そしてどうしようもない程の哀しみ。虚無だ。
「無実の加害者」と呼ばれる主人公に世間は残酷だ。きっかけを作った人物はいる。しかしそれを何も考えていない(かのような)マスコミがひたすら無遠慮に追う姿がいちばん恐ろしいとも言える。あれが、我々が「知りたいもの」を追う姿なのかと思うと本当に薄ら寒くなった。そして、「被害者」しか見ないこの社会にも。正義は怖い。本当に。
演者全てが凄まじい演技合戦を見せる。筒井真理子の圧倒的存在感。二面性。表情全てが完璧すぎて圧倒された。そして市川実日子の「欲」。もうあれは愛というより欲、執着だろう。恐らく本人も自分が何をしているか分かっていない、無我夢中な者。ふたりの演技合戦が心を震わせる。
深田晃司監督は人の情と悪意というか、嫌悪を描くのが本当に巧みだ。人の感情の機微にとんでもなく繊細だ。彼が見つけた「ミューズ」筒井真理子の映し方...。筒井真理子とはこんなにも凄まじい女優だったのか、と思った。「淵に立つ」より一層感じた。信頼関係があるのだろうな。

andhyphen