劇場公開日 2019年3月15日

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「疑問点もありつつ面白かった」ふたりの女王 メアリーとエリザベス Orcaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0疑問点もありつつ面白かった

2020年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

エリザベス1世がメインの映画だと、メアリー・スチュアートの幽閉や処刑のシーンはあっても、彼女のスコットランド女王時代に何があったかはほとんど描かれないので、そういう意味では興味深かった。

…のだけど、肝心のメアリー・スチュアートがあまり魅力的に映らない。その時々の感情に左右されたり、男性の臣下たちに翻弄されたりして、何がしたいのかよく分からない。幼なじみの侍女たちやイタリア人歌手と遊んでいるときは楽しそうだけど、言い寄ってきた最初の夫をあっさり信じてしまう甘さとか、「もともと君主に向いていないのでは」と思わずにはいられない。エリザベスが結婚しない理由として「女王と結婚した男は、「女王の夫」だけでは満足できなくなるから」と言うシーンがあるけど、実際メアリーがその通りの事態になっていくのだから、結論は「エリザベスが正しかった」(少なくとも当時の状況下では)、以上終わり、ということになってしまう。

スコットランドの荒涼とした風景や石造りの城はいい雰囲気で、行ってみたいなと思った。エリザベスとセシルの相棒っぽさも好き。

映画の世界に限らずダイバーシティやポリコレ、コンプライアンスが求められる現代ではあるんだけど、それを史劇にまでさかのぼって適用したのか、16世紀のエリザベス1世の宮廷に黒人の重臣がいたり、どう見ても東洋人の女性がいたりする。これは「さすがに無理があるだろう」としか…。黒人の俳優さんが悪いわけではないけど(いい演技してるし)、極東の日本では黒人奴隷の弥助が見世物みたいに扱われてた時代だろうに。

時代物にダイバーシティを取り入れるってそういうことじゃなくて、例えば「英国王のスピーチ」でジェフリー・ラッシュ演じる言語聴覚士がシェイクスピア劇に出たくても、「オーストラリア人にシェイクスピア演られてもね~」と理不尽な理由で不合格になるみたいな、「当時は誰も疑問に思っていなかったダイバーシティの無さ」をはっきり描くのが誠実なダイバーシティじゃないかなあと思う。

Orca