劇場公開日 2019年2月16日

「今を生きる日本人に見て欲しい作品」金子文子と朴烈(パクヨル) akkoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今を生きる日本人に見て欲しい作品

2023年7月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

知的

「私は人のために生きているのではない。私は私自身の真の満足と自由とを得なければならないのではないか。私は私自身でなければならぬ」

壮絶な人生を生きてきた者にとっての救いとはなにか。

私は女性だから、どうしても女目線で鑑賞してしまうから文子気持ちを想像しながら鑑賞した。

私は幸い今まで飢えることなく、屋根もある、清潔な寝床もある割と豊かな暮らしをさせてもらってきたから、ここで描かれる朝鮮出身者や文子のような理不尽な思いを受けたことがない。

だから、彼らや彼女達の想いをどこまで理解できるのかはあくまで想像力が試されるわけだけど、そんな境遇で生きるしかなければ、彼らのように突き動かされ、何かを変えたいと強く思うに違いない。

彼らは若く情熱もあり、そして純粋だった。純粋だから、生き様も死に様も清々しいほど一貫して、五十代の私にとってとても眩しい。人生の一瞬の煌めきの如く生きた文子に私は感動した。彼女の朴烈への深い愛情と信頼も純粋なだけに、ため息が漏れた。

これだけ互いを理解し合う同志に出会え、魂を重ね合わせたことは、ただただ地を這いずり回って生きた彼らにとって闇の中で見る光だったのではないか。

日本ではなかなかリアルな明治大正昭和を描く作品が少なくて残念に思うが、近代史こそ今の日本人にとって学ぶべき時代ではなかろうか。その時代を生きた人々の想いに想いを馳せることのできる素晴らしい作品だった。

akko