岬の兄妹のレビュー・感想・評価
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あまりお薦めできないが傑作
観たい映画がたくさんあるのだが、しょうがないので「岬の兄妹」を観た。去年が慎一郎で今年が慎三かよと思う。「カメ止め」と違ってあまり皆さんに薦めたくなる映画では無いのだが、観ずに通り過ぎることが許されない映画なのだ。81年生まれの若い監督である。自前の金で妥協をせずに2年間掛けて作ったというのだが、時代は変わった(良い時代になった)とつくづく思う。フィルムの時代にこんな自主制作映画は絶対に作り得なかったからだ。その意味ではSKIPのDシネを目指してこれからも才能ある監督がどんどん出て来るのだろう。主演の松浦祐也と和田光沙はもちろん良いのだが、撮影(池田直矢)が素晴らしい。冒頭の波止場の風景でまずグッとくるし、真理子が道に転がって泣きわめく二人にず〜っと寄ってく長回しには恐れ入りました。が、浜辺でずっと手持ちでトラックバックしていくカットだけが不満(寄るのはいいのだ。下がっていくとカメラアイを意識してしまうだけ)。間違いなく傑作なのだが、堂々とお薦めできる映画でないことがただただ残念!
今までにないくらい強烈な作品
こんな劣悪な事柄ばかりを見せられて、受け入れられるかどうか、耐えられるかどうか─。差別的であり、インモラルであり、汚物のようなこの映画。敢えて言うと、暴力あり障害者がやりまくり小人と嘲笑したりウンコが出たり老人や未成年の性的欲求がリアルに表現されていたり・・・どこかで必ず目を背けたくなるところがあるはずだ。それでも、自分は受け入れる。そして、その衝撃はこれまでにないものだった。
ありがちな薬物や酒、殺しなどによる転落などとはまるで違った最底辺の人間模様が展開されている。あらゆるメディアで避けられてきたようなヤバイ表現を、この世の中を生き抜くという究極的なテーマのために、臆することなくストレートにぶちまける。あんなにまで悲惨な状況を提示されても、同情や悲哀といった感情を全く寄せ付けず、ただただこの文明社会での一種の命の形を見せつけられた。
この作品を受け入れられない人・もの・場所は、少なくないはず。内容は間違いなく酷い。しかし、衝撃や共感を受ける人もまた少なくないはずだ。
凄い、衝撃作。
映像、音楽、演技、ストーリーなどの全てが素晴らしい映画でした。そしてあまりにショッキングな内容!
この映画を映画館で観れたことを心から嬉しく思います。
邦画にうんざりした映画ファンの方に是非!
非商業映画
70年代のATG映画の様な趣のある作品でした。
平成も終わる時代にこういう作品が作られ、しかもイオンシネマで上映されることが驚きと共に関係者に感謝です。
大昔、10代の頃に「初恋・地獄篇」を観た時のような不思議なやるせなさを感じた作品でした。
良い映画
あらすじ…
兄貴は"ビッコ"で、鎖で繋がれた妹は"白痴"である。会社をクビになった兄貴は、妹に1時間1万円で売春させ、ゴミ漁りの日々から抜け出そうとする。妹は"小人"の客に気に入られるが、腹を孕まされてしまう。堕胎費用を捻出出来ない兄貴は、妹と小人を結婚させようとするが、上手くいかず…云々。
このストーリーを聞いて、不快と思われた方は観ない方が良いでしょう…SEX描写もまあまあ生々しいです(笑)
↑差別用語を少し使って書きましたが、この映画から感じた空気感は正にそんな感じでした…ですので、これを読んで不快と思われた方には、あまりオススメしません(笑)
*ハッピーエンドなんか糞食らえ!予定調和なんかしてやらない!…そんな絶望的な物語の映画です(笑)
*70年代には、こんな物語いっぱいありましたなぁ…(笑)
絶望の一歩手前
お話自体は絶望的な話なのに不思議と笑えたり、瞬間ホッコリしたりして
救いとは違うんですが完全に絶望感に襲われる作りにはなってなくてそこが
この作品の凄味になってるような気がしました
それはやはり兄が一歩手前(半歩手前?)で踏みとどまってる姿にあるんじゃないかと思います。
あんまり人に勧めるような作品じゃないけどみてよかったです。
束の間の線香花火
売春婦は世界最古の職業と言われている。現在の日本では男女の貧富の差が一定ではないから、必ずしも男が女を買うだけとは限らない。最近では富んだ女が男を買う「娼年」という映画まで登場した。
男娼または娼婦が体を売るのは、売れるからである。需要のあるところには供給が生じる。そして価格との相関でそれぞれ増減する。一般の商品と同じである。だから品質がよければ需要は高まるが、同時に価格も上昇するので、需要はその価格に見合う程度に下がっていく。低品質でも低価格であれば、それなりの需要はある。
人間は理性によって自らを律することができるが、食欲と死の恐怖については簡単には律することができない。衣食足りて礼節を知るという諺の通りである。食欲に比べれば性欲は比較的に律しやすい煩悩だろうと思うが、それは痴漢やゴウカン(このサイトでは当該の漢字が使えない)の衝動を制御する程度のことで、性欲そのものを消し去ることができる訳ではない。人は常に性欲に振り回され続けている。ときには僧侶も国会議員もそれで信頼を失う。しかし人類が性欲から解脱したら、世界は一気に少子化となり、100年経たないうちに絶滅するだろう。それはそれでいいことなのかもしれない。
本作品は生活に行き詰まった兄妹が、あるきっかけから知恵遅れの妹に売春させる話である。いくつかの失敗を重ねると、兄は効率のいいやり方を見つけていく。場末の港町にも売春の需要はあるのだ。
兄も妹も障害者であるにもかかわらず、登場する行政は幼馴染の警官だけで、福祉関係については人も建物も何も出てこない。この兄妹みたいな人々は日本にたくさんいるのに、行政は彼らが自分で手続きしない限り何もしない。それどころか、小田原市の職員のように「生活保護なめんな」とプリントされたジャンパーを着て、保護申請をした人々に対して不正な申請と決めつけて威圧するような役人ばかりである。大抵の役人と政治家は、国民から預かった税金を自分たちのものと勘違いしている。
兄妹にとって頼れるのは自分たちだけ、そして資本は体だけだ。妹を売春させるのは必然の成り行きである。兄は妹がいつまでも若くないことを知っている。行き詰まれば妹を殺して自分も死ぬしかない。そういった事例は、全国にたくさんある。報道はされないが、WHOによると日本では毎日200人が自殺している。アベノミクスで生活が向上したと言い張っている日本は、確実に貧しくなっている。ヨシオとマリコは日本中にいるのだ。そして確実に増加している。
兄妹は売春の金で一息つくと線香花火を見て束の間の幸せを味わう。これまでも、これから先もいいことは何もないだろう。しかしときどきはハンバーガーとポテトを食べられるかもしれない。祭の縁日を歩けるかもしれない。また線香花火を楽しめるかもしれない。
まさに線香花火のように儚い二人の人生だが、彼らの人生を否定することは、人間そのものを否定することになる。人は束の間の線香花火を楽しむために、長くて辛い人生を歩むのだ。
無情である、そのことに尽きる。 障害者の性の問題、金銭的な問題の背...
無情である、そのことに尽きる。
障害者の性の問題、金銭的な問題の背景に潜む心の問題も、強烈に描かれていて、べったりと心に張り付いてしまった。
どん底の中の一瞬の楽しい時間、キラキラと微笑ましくも、現状を明瞭にしていて更に辛く感じた。それでもなお、微かな愛と快楽が同じように繰り返すのか?
上手すぎる演技と演出に圧倒された。
滑稽と悲哀が複雑
困窮した悲惨な状況ながら生活してゆこうとする様を、泥臭く生々しく笑いを交えて描いており、主人公兄妹のリアルな体当たり過ぎる演技も素晴らしいと思います。
また、泥臭い生活感の中にも、明け方の港や空を舞うピンクの紙切れなど、美しい場面や表情があり印象的です。
障害者やその性など繊細な部分が題材となっていますが、滑稽と悲哀のバランスも絶妙で、重くなり過ぎず、とは言え、やはり複雑な思いも残す、考えさせられる作品でした。
ラストの表情も、個人的には、元には戻れないというように感じました。
あのぉ。どうですか、一万円で。
問題作だ。これほどきついテーマをまっ正面から押し付けてくる。そこにあるのは自分とは無縁の世界、いや、知っていても知らんぷりしてきた世界。「万引き家族」が心暖かなホームドラマに思えてくる。
スクリーンの中にいる兄妹は自分ではないのに、まるであの段ボールで目隠ししたボロ屋に一緒に住まわされているような感覚が芽生える。そう、ヨシオが目をひん剥かれんばかりに妹の行為を見せつけられていたあの気持ちのように。そして、友人の警官のように、気遣いをみせているようでやはり他人事としか見ていない自分の目の前に、等身大の鏡を立てかけられて、この映画を見ている自分を見せられているような嫌悪。そりゃあ生活保護を受けろよ、という意見だってあるだろう。だいたい、そこに考えが至らないのかもしれない。でもその発想が起きる前に、もがいてもがいてしがみつくような生き方しかできないこの兄妹の、薄汚いド根性に激しく心揺さぶられるしかない。
ヨシオの腹をくくった後の表情の見事さ、マリコの体当たりの迫真の熱演に、惜しみない拍手を送ります。
映画でしか表現出来ないおぞましさ
これは映画じゃないと表現出来ないですね。
テレビで放送出来ないけど、放送すれば苦情が殺到しそう。
自閉症と知的障害の妹も、その妹の性の部分を利用しないと生きていけたい兄もどちらも、直視できないほど辛い。
可哀想だとか、頑張って、なんて言えないくらい。
兄も客たちも、男として最低。女性が見るともっとおぞましい物に見えると思います。ただ、男の自分には大なり小なり同じ最低な部分もあり、まったく理解できない訳では無いところが辛いところ。
見たくもないし考えたくもないけど、映画ならそれが表現できるのだと思う。救いのない絶望だけど、見方によってはほんの少しだけ希望もある。
後味は悪い。なんとも言葉にしにくい。
ポン ジュノ監督の推薦文
デビュー作、ポン ジュノの推薦文。
何故?山下監督・ポンジュノ監督の助監督。納得。
決して綺麗でも胸がときめくわけでもなく、逆に貧しく、汚く、辛く、苦しい でも愛がある話。
両監督のDNAをしっかり受けづいている。
私的映画史で言えば、青春の殺人者以来の衝撃。
ありがとう。2作目楽しみ。
上映してくれた、イオン映画の配給にも感謝。
本日、ROMA/ローマ も鑑賞。
大満足の1日!
3*9 イオン桂川 9*25~
感動ポルノの進化系
エンターテイメントとしてはおもしろかった。
主演2人の熱演も素晴らしいし、結構笑えた。
でも、内容は薄いかな。
「感動ポルノ」(障害者=感動をくれてありがとう、の図式)という言葉が以前流行ったけど、この映画は感動ポルノの進化系?変化球?
リアリティがあるようで…?
私は高機能自閉症なのですが、予告編で「障害」「自閉症」というようなワードをそんなに強調して宣伝する必要があるのか、とちょっと不思議に思いました。
実際に作品を見て、映画としてはうまいと思いました。
一方、「タブー」「センセーショナル」「衝撃的」とか評されそうなシーンを、ただただ見せられたという感覚も受けました。
何を描きたいのかあまり伝わってきませんでした。
演出や役者さんの演技は良かったです。
生活の細かな描写、閉塞感や怒りの表現にはリアリティを感じました。
しかし、人物や状況の設定には全くリアリティを感じなかったので、何も心に残りませんでした。
只者じゃない この監督
久しぶりの邦画の衝撃作。深刻なストーリーをユニークなカラーで最後まで維持して全て昇華しています。カメラを止めるな に通じる切羽詰まった連中がとんでもない映画を作った感じ。この監督只者じゃないです。全く女性向けではないとは思いますが男性にはかなりオススメです^_^ ちゃんと娯楽作品になってる空気感が評価できます。風祭ゆきさんが特別出演で出てるのはまいりました。主役の二人もとても魅力的でした。
パンチがあって、におってきちゃうイイ映画!!
エネルギッシュでパンチがあって、画面からいろんなニオイが出てきちゃってるイイ映画!
ラストシーンもイイ!あれがイイ!
ああでなくっちゃ!
賞をいくつもとった作品と比べる人がいるが、あちらよりこちらのがずっとイイ!!
におってくるものがある!
しげる
海辺の町で2人で暮らす脚の悪い兄と自閉症の妹の話。
妹は無職、兄は造船所で働いていたが不景気に伴ってクビになり、妹に売春をさせて暮らす様になるストーリー。
重く悲しくやり切れない話ではあるのだけれど、同情を買う様な発言だったり嘘だったり言い訳だったり見栄だったりと兄の甘えや不誠実さが目につき素直に受け入れられない。
序盤のやり取りで警察官の発した「何もわからないよ」が正にその通りだし、これをどう受け止めるかということに尽きると思う。
情があったり本当に必要なら最初から切られないだろうし、枠が空いたからと復職出来ても何も変わらなければ次も候補の筆頭だとは気付けないんだろうなあ…と考えてしまうぐらいにハマった。
生き続けることこそが尊い
日曜の朝から悲劇を観てしまう自分がいる。まだ「アリータ」も「グリーンブック」も観ていないというのに……
これは「赤い雪 Red Snow」に続く圧倒的な悲劇だった。悲劇しかなかった。
自閉症の妹とふたりで暮らす兄。足が悪く職を失い家賃を払う金も無く電気を止められ生ゴミをあさる。兄はふたりで生きていくために訳も分からぬ妹に売春をさせる。
葛藤しながらもそれを続ける兄、そして妹。まったく出口のない閉塞感に息苦しくなる。
彼らのしていることは確かに「犯罪」なのだが、生き続けるための「正しい行為」だと思う。誰に迷惑をかけるわけでもない。
「万引き家族」と同様、観る我々に善悪の彼岸を突きつける秀作。
兄の「罪の意識」が今作を決定的な悲劇とした。
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