劇場公開日 2019年3月1日

「アカデミー賞受賞式で」グリーンブック sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5アカデミー賞受賞式で

2024年3月13日
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鑑賞方法:VOD

助演男優賞プレゼンターのキー・ホイ・クァンに対する、ロバート・ダウニー・Jrの振る舞いがニュースになった。それを報じる映像の中には、本作ドン・シャーリー役のマハーシャラ・アリもいて、ロバート登壇の際には、祝福のために一歩踏み出した彼も無視されていたのだが、そのことは誰からも触れられていないようだ。(追記:後でXにて「マハーシャラ・アリ」で検索したら、少しいた)

そんなことを考えながら、「ああ、グリーンブックを見返すならこのタイミングだな」と思ってAmazonプライムで鑑賞した。

細かな内容の一つ一つについてはここでは述べるつもりもないが、観終わって、差別は完全に「する人の問題」だということを改めて再確認した。

「差別される人」の属性の問題なのではない。
その人の属性に起因する様々な結果が問題なのでもない。

その属性や、それに起因する様々な結果を「問題にしたい人(つまり差別する側の人)」が、自覚のあるなしに関わらず、「差別する目的で問題にしている」に過ぎない。それを、この映画では全編に渡って様々な例で描いている。

例えば、演奏会のメイン演奏者であるドクが、そのホテルのレストランで食事をさせてもらえないシーン。ホテルのマネージャーは、かつてNBAのチームの選手たちもここで食事をとらなかったことを引きあいに出し、「この地域の伝統だから」と説明する。「自分は差別してるつもりはない。ただここではそういうきまりになっているから」というのは、レイシストに限らず差別する側の常套句だ。
なぜ、受け入れる理由を探すよりも、排除の理由を探すのか。
答えは「差別したいから」以外には見つからない。

主人公のトニー・ヴァレロンガも、差別をする側であると共に、される側でもある。彼は、黒人、ユダヤ人、ドイツ人、中国人への差別感情を口にするが、自分もイタリア人であることで、差別的な取り扱いを受ける。
ある時は、白人として恩恵を受けるが、ある時はイタリア人として蔑みの対象になるというように、差別の基準がコロコロ変わるのは、「差別は、差別する側が恣意的に基準を変えてまで行う、する側に起因したもの」ということをよく表している。

特定の属性に対する無知や偏見は、それが指摘され可視化されることによって少しずつ減ってきていることは事実で、実際、あらゆる面で状況は改善されてきている。
差別を減らしていくためには、そうした地道な一歩一歩が大切だと思うが、時に差別を訴える声に対して、周囲から否定的な言動がなされることもある。
しかし、それこそが「差別はする側の問題」で、「否定的な言動=差別したい気持ちの表明」ということをよく表していると思う。

民主主義社会である限り、心の中で何を思おうがそれのみでは問題にされない「内心の自由」は、最も大切にされるべき権利だが、だからといってそれに従った振る舞いが許されるかどうかは、全くの別問題だ。
アカデミー賞での、ロバート・ダウニー・Jrの振る舞いについて、彼の差別意識があったかなかったか、彼の内心を周囲が騒ぎ立てて問題にするのではなく、可視化されたものに対して一人一人がすべきことは、「自分の中の差別したい気持ちと向き合い、より良い振る舞いについて考えること」しかないと思う。

最後は、話題を変えて。
グリーンブックの中で一番好きなシーンは、ラストのドロレスがドンに抱きついてお礼を言うところ。
もう今回で4回目くらいの視聴だが、やっぱりそこは泣いてしまう。なんでかなぁ。

sow_miya
みかずきさんのコメント
2024年4月21日

コメントありがとうございます。

私がレビューをブラッシュアップしたのは、ブラッシュアップして腕試しをしたいターゲットがあったからです。目標があったからです。
折角、レビューを書くのですから、スキルアップしたいからです。

さて、本作、人種差別については新レビューに書いた通りです。
加害者意識の希薄な加害者の意識を変えないと人種差別はなくならないと思います。本作のように、人種差別の実態、被害者の痛みを加害者が知ることが大切だと思います。

では、また共感作で。

ー以上ー

みかずき
みかずきさんのコメント
2024年4月20日

こんばんは。

現在、私の本作レビューを新観点でリニューアル中です。
4月21日には投稿予定です。
拝読して頂いて、再共感頂けたならば共感ポイントをお願いします。

ー以上ー

みかずき
saltsnowさんのコメント
2024年3月29日

相互ありがとうございます。これからよろしくお願いします!

さて、本作は私も大好きです。ラストシーン、いいですよね。ストイックな緊張の中に人生が囚われたピアニストの緊張が家庭でほぐれる瞬間。涙なしには観られませんね。

saltsnow
sow_miyaさんのコメント
2024年3月18日

Mr.C.B.2さん、コメントありがとうございました。
数日前から車椅子ユーザーの方の映画鑑賞について、X上で交わされているポストは、まさに「否定的な言動=差別したい気持ちの表明」になっていて、かつ、そのことに無自覚な様子が残念でなりません。

sow_miya
Mr.C.B.2さんのコメント
2024年3月18日

日本には差別がないと思っている人もいるかも知れないですが、トイレ清掃員の平山に対する子連れの母親の態度にも差別意識が見えます。
今の日本では「差別」を「いじめ」に置き換えても通じるのではないでしょうか。

「手紙をありがとう」は良いですよね。

Mr.C.B.2
ゆ~きちさんのコメント
2024年3月18日

アリのエレガントな語り口も好きですが、トニーがドンドン変わっていく過程も素敵でした。トニーの誤字だらけのラブレターはマジで笑いました😆!

ゆ~きち
ゆ~きちさんのコメント
2024年3月18日

なんて知的なレビューでしょう!

私もこの作品大好きで、観るたびに泣けるのですが、マハーシャラアリの上品さがあまりにかっこよすぎて、彼の英語にときめきながら観てました!

ゆ~きち
トミーさんのコメント
2024年3月17日

この作品で面白かったのはフライドチキン談議、チキンは黒人の食べる物というのが逆説的。あとは代筆の所。
ダウニーJRは事後言い訳してますが、どう見えたか考えてほしいですね。どん底に在った時の自分を思い出したりしてさぁ!

トミー
カールⅢ世さんのコメント
2024年3月14日

助演男優賞の受賞式の件、ちょっと調べました。やな感じですね。マハーシャラ·アリのグリーンブックでの品のある冷静な対応が頭をついよぎるの、とてもわかります。エマ·ストーンもミシェル·ヨーを無視したとか。
ウィル・スミスのドリームプランのときの事件もついでに思いだしました。

カールⅢ世
りかさんのコメント
2024年3月13日

はい❣️ありがとうございます😊

他人の振り見て我が振り直す、

信条の一つにさせていただきます🙇

りか
りかさんのコメント
2024年3月13日

おはようございます😃
共感ありがとうございました😊
すみません、ニュースではチラッと見ていますが、wowowでも放映されていましたが、実際の場面観ていませず、エブエブの方とエマ•ストーンの方はしっかりニュース見ています。差別の最大の壁は、心ですね。難しい🦁

りか