劇場公開日 2019年3月1日

「アイデンティティに気づく旅」グリーンブック TSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5アイデンティティに気づく旅

2024年2月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

幸せ

過去鑑賞作のレビュー。
アカデミー賞とったというのに、全くノーマークだった作品。

もう何百人もの方がレビューを書かれていて、ALLTIME BESTにも選出されている名作なので、映画のあらすじは書きません。自分が感じたこと、考えたことを書きます。

■黒人差別の知らなかった一面を知った
アメリカにおける黒人差別がどういうものかは、歴史の教科書以上のことは知らなかった。この映画で、1960年代当時にアメリカ北部と南部でこれだけ違う社会があったということも知らなかった。そして、北部では一部の才能や富を持つ黒人が(一応は)社会的に高い地位にいたことも知らなかった。この人種差別は我々日本人の想像以上に複雑なものだったということを知った。
主人公2人も劇中で「黒人差別の知らない一面」を知り、衝撃を受けるのだから、何も知らない日本人が衝撃を受けるのは、当然と言えば当然か。

■俳優2人の演技力
トニー役のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役のマハーシャラ・アリの演技が素晴らしい。粗暴だが、家族想いで本質を見抜く眼を持つトニー。教養高く気品に溢れるが孤独な天才シャーリー。全く水と油のような個性の強い2人が、それぞれの個性を徐々にむき出しにして衝突していくが、その衝突が契機となって相互理解を深めるという過程を違和感なく演じている。淡々と進むロードムービーではなく、動のトニーと静のシャーリーがいて、物語にリズムが出てくる。

■これは1人の天才が、1人のオヤジの力で、自分を取り戻す旅の話
この作品は、大人の男同士の人種と価値観を越えた友情物語であり、美談です。制作側もそれを意図して、狙って作っていると思います。ラストシーンもベタと言えば、ベタです。でもそれだけだろうか?
私が一番印象に残った台詞は以下の2つ。私はこの2つの台詞がこの映画の本題を表しているように思う(あくまで個人的解釈)。

「If I’m not black enough, and if I’m not white enough and if I’m not man enough, then tell me Tony, what am I?」(私が完全な黒人じゃなくて、完全な白人でもなくて、完全な男でもなかったら一体私は何者なんだ?)

「Anyone can sound like Beethoven or Joe Pan or them other guys you said. But your music, only you can do that.」(ベートベンとかジョーパンとかは大勢が弾く。あんたが弾くような音楽はあんただけ)

それぞれ別のシーンで出た台詞だが、繋がっていると思う。自分が何者かわからなくなっている天才に「おまえは唯一無二だ。おまえはおまえだ!」と言うオヤジ。
シャーリーの雨の中での魂の告白には心打たれたが、トニーの言葉には「やるなオヤジ!」と声をかけたくなった。

他にも、名シーン、名セリフがいくつもあり、色々な気づきを得ることができた。感動だけではない、味わい深い映画だった。

TS
かせさんさんのコメント
2024年4月21日

JFKとその兄弟が自由民権運動で、何をしたのかが分かる作りも自分とって新鮮でした。
いやー二人とも格好よかったなあ。

かせさん
みかずきさんのコメント
2024年4月20日

こんばんは

現在、私の本作レビューの新観点でのリニューアル中です。
4月12日には投稿予定です。
拝読して頂いて、再共感して頂けたら共感ポイントをお願いします。

ー以上ー

みかずき
ゆ~きちさんのコメント
2024年2月26日

TS さん、共感ありがとうございました。

この作品、本当に好きなので嬉しいです。

ゆ~きち