劇場公開日 2019年3月1日

「複雑に入り組む人種差別」グリーンブック ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5複雑に入り組む人種差別

2019年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

粗野なイタリア系白人と知的な黒人のロードムービー。あえて黒人差別の激しい南部へコンサートツアーに行くシャーリーの決断は、それもまた偏見をなくす一歩であるからだが、そのコンサートに来るのは、「先進的」だと思っている白人ばかり。黒人の音楽に理解を示す自分は差別主義者などではないと彼らは思っている。しかし、地元の黒人にはめもくれず、この構造自体が差別を温存してもいる。(スパイク・リーが過激な発言をよくするのは、そういう構造に利用されたくないという思惑もあるのだろう)
白人であっても貧困で被差別的な扱いのイタリア系のトニーは黒人に仕えるということに複雑な感情を抱き、黒人であっても知的で裕福に暮らすシャーリーは黒人コミュニティでも馴染めない。人種差別がとても複雑に入り組んでいるのである。
その複雑に対して、やや安直すぎる結末ではないかとも思うが、気持ちよく観られる作品だ。ただ、気持ちよくなっただけでは、「先進的」だと思いこんでいる南部の白人と変わらない。差別の複雑な背景を理解するよう努めなければならない。

杉本穂高
ハサユキさんのコメント
2022年2月6日

もっと映画を楽しめよ。
安直な結末って、コレ実話でしょ?

ハサユキ
サバヨミさんのコメント
2020年5月31日

確かに安直に観てはならない題材だとは思いますが、私は白人ではなく黄色人種です。トニーの前に面接されたチャイニーズがいましたが、当時のチャイニーズ事情もよく分かっていません。
勉強不足なのでしょうが、その無学さでトニーに共感できました。
トニーの家族のように、無学さが差別をしない対応が出来るのかもと思わせてくれました。黒人に対する差別を教科書でしか知らない日本人が手放しでこの映画を絶賛するのと当時「教養」を掲げて黒人を迎えるエセな白人と必ずしもイコールにならないのではないかと思います。
この論議を白熱させて害するような作品ではないので、気分を悪くさせてしまったなら申し訳ないです。
ただただ、彼らの友情を愛する仲間には違いないと思っています。

サバヨミ
asicaさんのコメント
2019年10月29日

ものすごく的確に言い表されていて素晴らしい感想です。

asica