劇場公開日 2018年11月30日

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「この映画の監督はまともじゃない(笑)」ヘレディタリー 継承 タミヤ・ユウさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5この映画の監督はまともじゃない(笑)

2018年12月4日
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こんなに気味の悪い映画を劇場で観たのは初めてですね...
「21世紀最高のホラー映画」
この映画がそう言われてるのもまぁ無理ありません。

エクソシストすら観てない自分が言うのも難ですが、僕自身観た後にこんなに怖い思いをしたのはあったかどうかという感じです。
いやぁ、怖すぎます((( ;゚Д゚)))

ある一家の祖母が死ぬ事で、悲劇的な出来事が起きるというのがこの映画の始まりです。
ここまではよくありそうなホラー映画という感じなのですが、この映画の怖さは家族の死によって人が次第に狂っていくところです。

また、この映画の前半は怒濤の後半に比べると伏線を敷いてる部分というのもあってそんなに怖くは無いのですが、全体を通して気味が悪いです。
その得体の知れない気味の悪さが緊張感をより高めていて、前半から心臓はバクバクでした。

一見普通に見える祖母の遺影もよく見ると怖い肖像画のようで何処と無く不気味ですし、時折出てくるお母さんが作るミニチュア模型やノイズ等を交えた冒頭から出る不吉な音楽、そして何よりも予告編でも映った常に奇妙な表情で常に「...カッ」と舌を鳴らしてる娘は本当に怖いです。(この娘が何故そうなったかは劇中で明かされますが、少し分かりにくいので人によっては何で?なるかもしれないです)

そして、ホラー映画でありながら色々な要素が詰まっているのが面白いです。

この映画は家族の周りで起こる様を描いているので、家族間のやり取りや人間関係もしっかりと描かれていて、特に母親と息子の関係性はいろいろ考えさせられます。
そういった家族映画の側面もあります。
だいぶ狂ってる家族映画ですが(笑)

また、先程前半は伏線部分と書いた通り、その伏線が後半にかけて結構重要になっていきます。
そして、それが全て回収されたときは背筋が凍りつくほどゾッとして、思わず悲鳴をあげたくなりました...
そんなミステリー要素も強い作品なので、ミステリーが好きな自分にとっては満足(?)出来ました。
ただ、伏線を敷く時間という事もあって前半部分は人によって退屈に感じてしまうかも知れないです。ミステリーが好きな人は面白いかも知れません。

個人的にはラストシーンの演出だけが少し微妙に感じたり、息子役の俳優がトニ・コレット演じる母親の息子に見えなかったりはしましたが、ここ数年のホラー映画の中ではこれ以上無い完成度だと思います。

この映画の満足点は非常に高いですが、こんな高い点数を付けて良いのかとも思ってしまいます。
「素晴らしいホラー映画を見れて良かった!」という気持ちと「何故こんな気味悪い映画を観てしまったんだ」という相反する気持ちもあり、非常に複雑です。
2回観る面白さもこの映画にはありますが、自分はもう一度観る勇気が出ないし人にも勧めづらいです。
実際、残酷な描写や目を背けたくなる気持ちの悪いシーンも多いです。

ただもしかしたら、ホラー映画の一番の理想形はこういう映画なのかなとも考えています。
映画を観てる時だけ怖い思いをするのではなく、観た後も怖さが残るのが本当の意味でのホラーなのかも知れません。

とりあえず、不気味で怖さが残る作品を観たい人には自信をもってオススメします。
それ以外の人は...とりあえず観たい人だけ観てください。
観る際は自己責任でお願いします(笑)

タミヤ・ユウ