劇場公開日 2018年9月8日

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「光州事件からの長い闘いと道のりを経て、民主化の陽が昇る」1987、ある闘いの真実 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0光州事件からの長い闘いと道のりを経て、民主化の陽が昇る

2019年2月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

知的

韓国映画はサスペンス/バイオレンスに傑作多いが、社会派映画にも見応えある力作多い。
実録物なら尚更。
いつぞや見た『タクシー運転手 約束は海を越えて』に続き、こちらも大変良かった!

1987年、軍事政権下の韓国。
警察による反体制分子摘発が激化。
デモに参加した大学生が警察によって拷問死。
それをきっかけに、民主化の火種が拡がっていく…。

韓国の当時の政治背景が絡み、小難しそうに思うが、何て事ない。
独裁政権/国家権力によって一人の一般人が殺された。
こんな暴虐をこのままにしていいのか…?

大学生を殺したのは、誰もが名を聞いただけで震え上がる某警察。
捕まったり、連行されたりすれば、そこで終わり。
その警察の実態とは…、ゾッとするほど恐ろしい。
取り調べという名の拷問は、暴力、水責め、電気ショック…。
拷問殺人の他に警察ぐるみで、隠蔽、捏造、横領…。
所長は絶対君臨者。部下は死の執行人。
こいつら、本当に警察か…?
もはや警察に非ず。
“警察”という皮を被り、“権力”という武器を行使し、質が悪いってもんじゃない。
やくざや犯罪組織以上の極悪さ。

当然、こんな暴虐が隠し通せる筈がない。
検事が捏造された大学生の死に不審を抱く。
新聞社がスクープする。
真実を知る刑務所看守は隠蔽に苦しむ。
仲間の大学生たちは闘争に立ち上がる。
多くの人々が現体制に立ち向かい、各々闘いに身を投じていく様を活写する。

極悪警察組織はダーク・サスペンス。
立ち向かっていく検事や新聞社はこれぞ社会派映画!
真実を知る看守のドラマは人間味たっぷり。
民主化に協力する神父らへの情報伝達などスパイ映画のようなスリリングさ。
学生運動の青年と看守の姪の青春ドラマ風の当時の風俗やスパイス的なユーモアも織り込み、群像劇スタイルの社会派エンタメとして、本当に面白く出来ている。

『チェイサー』のキム・ユンソクとハ・ジョンウが再び対立し、『タクシー運転手~』にも出演したユ・ヘジンや名優ソル・ギョングらベテラン、『お嬢さん』のキム・テリや『MASTER マスター』のカン・ドンウォンら若手、韓国実力派の面々のアンサンブル。
『ファイ 悪魔に育てられた少年』のチャン・ジュナンの演出も上々。

『タクシー運転手~』の題材である光州事件にも触れられ、そちらも知っておく(もしくは『タクシー運転手~』を見ておく)と、よりいいかも。
本作は、光州事件から7年後の事件。
言い換えれば、今から僅か30数年前。
『タクシー運転手~』の光州事件の時もそう感じたが、遠い昔ではないつい数十年前、お隣の国でこんな大事件があったのだ。

しかし、驚くべき事ではないかもしれない。
今も“北”の方では軍事独裁政権が続いてるではないか。
韓国も日本も昔はそうだった。
が、いつまでも民衆が苦しむ政権が続いたりはしない。
いつか必ず、民衆が立ち上がる。

その時は、多くの民衆が傷付くだろう。血を流すだろう。犠牲になるだろう。たくさんの悲しみに溢れるだろう。
苦闘の末に礎が築かれた、民主化までの長い道のり。
民衆の声を聞け。
民衆の声に耳を傾けろ。
民主化の陽が、昇った。

近大