劇場公開日 2019年9月20日

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「酷すぎるダイアログに絶望」アイネクライネナハトムジーク 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5酷すぎるダイアログに絶望

2023年10月20日
iPhoneアプリから投稿

何気に初の今泉力哉映画。物語の展開がどれだけ面白くても会話がダメと何もかもダメだなということを改めて実感した。今泉作品は無駄なく自然なダイアログが見せ場、みたいな評判をよく耳にしていたのでけっこう拍子抜けしてしまった。会話の内容自体もクソどうでもいい(なおかつクソどうでもいいなりに新たな言語的宇宙が生成されている感じもない)し、会話の始まり方がものすごい作為的というか、無音との境目がハッキリとしすぎている。というのも登場人物たちにそれぞれ明確な「語るべきこと」があるからだと思うのだが、そんなあまりにもキチンとした奴らの交わすダイアログのどこが自然だというのだろうか。一瞬たりとも心を動かされる瞬間がないことに逆に心を動かされてしまった。もちろん悪い意味で。ただ先述の通り、伊坂幸太郎が敷設したトリッキーで後味爽やかな物語展開は見事なものだった。できごとの破片が時代を超えて呼応し合うざわめきみたいなものを存分に楽しむことができた。それにしても原作モノは監督の手腕一つでどうにでもなってしまうから恐ろしいな。俺が小説家だったら死んでもワガママを押し通して濱口竜介に映画化してもらいたい(傲慢)。

因果