劇場公開日 2018年6月9日

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「シンプルな映像世界に、難易度の高い語り口がナチュラルに炸裂。」それから ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シンプルな映像世界に、難易度の高い語り口がナチュラルに炸裂。

2018年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

知的

幸せ

冒頭の長回しからどことなく夫婦間のぎこちなさがはびこり、ここから始まる物語が物語の基本軸かと思いきや、それに並行してまた別の時間軸が入り込んでくる。観客としてはあたかも「時空のねじれ」に遭遇したかのように少々戸惑ってしまうのだが、しかし慣れてしまえばこっちのもの。あとはもういつものホン・サンス作品と同様、クスクス笑いの連続沼に入り込んでいくのみ。モノクロのシンプルな作品に見えて、このような難易度の高い仕掛けを周到に炸裂させるあたり、この監督は本当に飄々としていて、すこぶる巧い。

彼の作品群では、出会いと別れ、それに色恋沙汰が不可欠なものだが、それにしても本作では何かのために簡単に「捨てる」という、現代社会を投影したような行為が印象的だ。また事態の不条理さに気持ちの良い態度で抗うヒロインの姿が忘れがたい。キム・ミニの好演もさることながら、ホン・サンスはいつもながら女優を丁寧に描いている。

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牛津厚信