劇場公開日 2018年12月21日

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「ヴァネロペが単に我が儘な女の子だったのが残念!」シュガー・ラッシュ オンライン HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヴァネロペが単に我が儘な女の子だったのが残念!

2019年1月4日
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鑑賞方法:映画館

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この映画を続編の本作品のみしか観ていない人には、かなり評価が高いみたいですが、私を含め前作を観ていた多くの人が、今作の続編にはイマイチ共感出来ずにガッカリしてしまっている観客が意外に多かった要因としては、仮に、今回のこのアニメ映画が、「封建的で保守的な時代遅れな社会に対するアンチテーゼ(否定的命題)」を込めた作品である、或いは「女性の自立」を高らかに謳った作品だったにせよ、それにしても、主人公の1人であるヴァネロペが、前作で、やっとの思いで復帰することが出来たアーケード式レトロゲーム機の『シュガー・ラッシュ』を、自分の我が儘で、いとも簡単に捨てる決断をしたことに尽きるでしょうね。

そもそもが「私の住む家がなくなっちゃう!どうしよう?ラルフ助けて!」といことで、インターネットオークションサイトに出品されていた今では生産中止になっている『シュガー・ラッシュ』のゲーム機のハンドルを手に入れるべく、2人してインターネットの世界に危険を顧みずに侵入したにも拘わらず、いざ自分自身の思いが満たされると、従来からの『シュガー・ラッシュ』の他の住人達の事なども一切無視して、「ここで私の居場所を見つけたの!私はこんな生活が夢だったの!」とは、あまりにも虫が良すぎるし、我が儘にもほどがあるとしか良いようがなかったですね!!!

ヴァネロペの「自分の居場所探し」「女性の自立」と言うと、一見すると聞こえは良いけれど、今回の続編のストーリー展開から見えて来るのは「もはや『シュガー・ラッシュ』の時代遅れの世界には飽きてしまったから、こちらの新しい世界に移ることにするわ!」とでも言うような薄情な身勝手さしか感じられなかったのですし、少なくとも「昔から探してきた夢をようやく見つけた」というようには見えず、非常に残念で仕方がなかったですね!

片や、もう1人の主人公ラルフを、製作サイドの意図としては、単に保守的で時代の流れについていけない昔気質の人と理解させようとしているのかも知れないですが、私には、逆に自分の置かれた存在意義をよく理解している責任感の強い人と映りましたし、逆に、例えば、ヴァネロペの採った行為を肯定するとすれば、子供達がこの作品を観て、他の人たちとの協力の下にやっとの思いで手に入れた物を、自分の気持ち次第で、他に目移りする新しい良い物があったからと言って、いとも簡単に現在手にしている物を手放す様なことをこのアニメが奨励しているかの様にも映り、子供向け映画としても、情操教育上あまり良くないかも知れないとさえも思いました。

なので、残念ながら、前作の様に、今作では厄介者扱いされてきたヴァネロペに対して同情心も湧かないし、自分勝手過ぎて、前作でヴァネロペが厄介者扱いされてきたのも当然かと納得してしまうばかりでした。

とは言え、以上の様な、ガッカリさせられた不満点ばかりでなく、良かった点を挙げるとしますと、SF映画『レディ・プレイヤー1』に匹敵する、或いは凌駕するほどのゲームや映画の登場キャラクターの豊富さ。
所謂、<小ネタの宝庫>であった点は間違いなく面白かったでしたね。

そう言う意味合いでも、大人向け・オタク向けのアニメ映画になっていたかも知れないですね。

再三予告編でも流れていましたが、アナやエルサ、白雪姫にシンデレラ、ベル、アリエル、ムーラン、モアナなど、(それに「別のスタジオの子」と称されるPIXARスタジオの『メリダとおそろしの森』のメリダをも含む)総勢14人のディズニープリンセスが大集結。サブキャラながら活躍する辺りも、映画の本筋ではないですが、なかなか強烈なインパクトを残してくれていました。

また、ウォルト・ディズニー社傘下にある、ルーカスフィルムの『スター・ウォーズ』のストーム・トゥルーパーやC-3PO、更に、マーベルスタジオの『アイアンマン』に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のベイビーグルートに対する質問サイトに加え、マーベル映画のカメオ出演と言えば、あの人、そうです。御大スタン・リーが一瞬ですが映っていたりと、後で、もう一度観直したい気持ちになりましたね。

勿論、前作でも登場したゲームキャラ(『ストリートファイターⅡ』や『ソニック』に至る日本オリジナルのゲームキャラまで)もしっかりした存在感を発揮して映り込んでいました。

また、それに加えて今作では「オンライン」の副題にある通り、インターネット社会で、必ず目にする実在するIT系大企業。
例えば、GoogleやYouTube、FacebookやTwitterに、Instagram、Amazon、楽天など、数えだしたらキリがないほど登場してくれていて、後ほど詳しく確認してみたくなりましたね。

さらに、インターネットの世界で目にする、あんな事やこんな事の、あるある体験が映像表現されていて「いかにも!」と言わんばかりの演出には、検索エンジンがキーワードを先取りして返すテキスト予測であったり、いかがわしいネット広告は、さも、いかがわしいキャラクターで表現されていたり、広告にミスタッチしてしまったりする細かい表現や、面白動画にハートを送る心理描写まで、インターネットあるあるの追体験が出来て、上手く表現しているなぁ。と感心するばかりでした。

と、小ネタについてばかり述べて行くとキリがないのですが、映画の本筋とは無関係なところにまで本当に盛り沢山な内容でした。

ただ、こういったインターネットの世界観の映像表現に関しては、パソコン歴が極端に浅い人、或いは、インターネットでネットショッピングやオークション、SNSや動画サイトを使ったり視聴したりしない人などは果たして理解出来たのかどうかは甚だ疑問ではありましたけれどね。

そんな中、観ている子供達にも分かり易く、コンピュータウィルスの怖さについて映像表現していた点は良かったですね!!!

ただ、ヴァネロペのために必死に行動してきたラルフでしたが、あんな形で、コンピュータウィルスの怖さを表現することになろうとは。
あたかもゾンビ映画『ワールド・ウォーZ』のゾンビ達が、集団でキングコングと化した様な演出には本当に恐ろしかった反面、その要因を作ったラルフが気の毒で仕方がなかったでしたね。

でも、あのコンピュータウィルスがその後一体どうなったのかも、ちゃんと描かれず終いだったのが気懸かりでもありました。
(もしや続編への布石なのでしょうか・・・?)

架空のオンラインゲーム『スローター・レース』のラスボス的存在の最強レーサーのシャンクとヴァネロペとの対決のくだりは、相当に4DX効果を意識した迫力ある映像表現になっていたかとも思いましたので、4DXで鑑賞するのも良いかも知れないですね。

とは言え、本来的な主題がなかなかハッキリ伝わりにくかった中にありながらも、イマイチ共感出来にくい続編ではありましたが、インターネット社会の光と影やコンピュータウィルスの脅威なども投影している作品として、深く考えずに観るには、そこそこ面白い映画かも知れないですね。

また、数ある主題の1つでもあるであろう、<友達との距離感の置き方>については、「真の友達は離れていても心はいつも傍にある」という点については共感は出来ました。

欲を言えば、アーケード式ゲーム機の『シュガー・ラッシュ』自体が『スローター・レース』や実在する『マリオカート』のように、インターネット展開してオンラインゲーム化すればお話しもすんなりとまとまって次回作への伏線の布石したら良かったかもと思いました。

私的な評価としましては、
前作が最高点の五つ星評価の満点評価でしたので、今回は、小ネタの宝庫の点では、そこそこ面白いながらも、主人公のヴァネロペの行動がイマイチ共感出来なかった点を★1個分減点し、四つ星評価が相応しい作品かと思いました。

※尚、エンドロールの際に、途中と最後に2つのオマケ映像がありますので、コレと言って大した映像でもないですが、出来ますれば、途中で席を立たれない事をオススメします。

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HALU