万引き家族のレビュー・感想・評価
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是枝裕和作品の集大成
複数、是枝裕和作品を視聴したが、本作は集大成と言える。
家族の在り方がテーマになっており、血縁関係に基づいた家族が本当に正しいのかを問ている。
血は繋がっていなくとも、気持ちが繋がっていることで成り立つ家族が描かれている。
また、国語の教科書にのっている「スイミー」は、これは社会と言う大波に対して、弱い力を持った人間が疑似的な家族(スイミーなら大魚)に粉していることの暗示であると思った。
血がつながっていることに加えて、愛を持っていることも重要なのだと再認識した。
どこにも愛はなかった
寂しい者同士、肩を寄せあって作ったかりそめの家族。祥太の万引きがバレなくても、社会と接点をもたずに育つ子供に明るい未来が待っているわけがないことは大人なら誰しもわかる。初枝が亜紀の存在を隠しながら両親のところへ行き強請りのようなことをしているのも、復讐めいた感じがして恐ろしい。
だけど、この家族を不道徳だとか無知で片づけることが誰にできるのか?家族を取り巻く人々に愛はあったか?虐待する親、綺麗事を並べる警察、誘拐を知ったパートの同僚、駄菓子屋の店主だってもう一歩踏み込んでいれば・・・。
結局どこにも愛はなかった。そこにリアリティーがあった。
もどかしさが胸をかすめる作品
「万引き家族」とのタイトルであるが、その家族構成がイマイチ説明されず、少しずつ会話の節々や当事者同士の距離感でそれを推察していくしかないのだが、現代の底辺層の生活が本当にこのようなのか?と言う不安というのか、なんとも言えない感情が胸のあたりをウロウロとしたまま物語は続いていく。
言わずもがなの名優たちがそれぞれの味を出しているのだが、やはり本当のその配役の人間がそこに居るような演技はさすがである。それは特に子役の二人が輝いており、お兄ちゃん役の城桧吏
くんは物語の中核を担うキャラをしっかりと演じきっていた。
また安藤サクラはお世辞にも美人とは言えないが、独特の魅力や艶っぽさがあり、素敵な女優だと再認識できた。
万引きという比較的軽いと思われがちな犯罪(りっぱな犯罪ですが、、、)から家族構成を魅せていく手法、またそれと並行して社会のおかしな点を糾弾していく姿勢には感服します。
またそれぞれの特に子供達の表情や心の機微を描くのが非常に秀逸だと感じました。
最後に少しずつ家族のそれぞれの中身が明らかになっていくのだが、治と信代が正当防衛とはいえ殺害し、埋めたというのはなんともピンとこない。またリリー・フランキーも色々な役柄をこなすカメレオン俳優ではあるが、安藤サクラと共に見せる屈託の無い笑顔には元々の人の良さというものがにじみ出ており、リアリティに欠けていたとも感じた。
しかし、ラストのゆりちゃん(りんちゃん?)の描写は悲しすぎる。まだ日本のどこかにこの様な状況が起きているのだと思うと非常に悔しい気持ちでいっぱいである。
個人的には苦手。 貧困と家族愛と。父親とは何?。 独特の視点を持つ淡々としたストーリー展開。
見終えた後のモヤモヤとした気持ち。
やるせなさと不快感と少し怒りと。
是枝監督の映画を観た後は、この気持ちになることが多いです。
今回はダメな方の映画でした。
ワイドショーを観た時に感じる、歪んだ良心で誰かを抉るような気持ち悪さ。
初期の『幻の光』や『DISTANCE』を観て、この監督が苦手になり、
その後の『誰も知らない』、『花よりもなほ』は違和感なく観れたものの、
この映画は自分にはダメでした。
独特の視点を持った映画を作る監督だと思います。
登場人物の誰かに視点を置いた映画ではなく、はるか上空から淡々とストーリーを進めていく視点。
そういった意味では『シン・レッド・ライン』や『天国の日々』を作ったテレンス・マリックに近い部分はあると思います。
特に『天国の日々』は幼い少女が殺人を犯す男女と疑似家族を過ごすストーリーという意味では近いテーマを持った作品かと思います。
ただ、テレンス・マリックの視点があくまで無感情で平等であるのに対して、是枝監督の視点は皮肉な目線を感じます。
これを言葉で伝えるのは難しいのですが、ありていに言えば「ここまで残酷にする必要はあるか?」と、私自身の根っこの部分が拒否反応を起こしてしまいます。
例えば、DVがあり、育児放棄があり、貧困があり、教育の放棄があり、お金への執着があり、死体遺棄があり、上げればきりがない程、世の中の残酷さを挙げて、それらをありきで繋いでストーリーを組み立てたように感じてしまう。
その上で登場人物を絶対的な悪として描くのではなく、振れ幅のある人間性として善と悪や、優しさと冷たさや、逞しさと弱さや、そういった2面性を持たせて描く。
そういった描き方が、これもありていに言えば「人間をバカにしているように感じる。」というのが私がどうしても拒否感を感じる部分です。
映画なので、少なからず2時間という尺を持たせ、広げた話をきっちりと収束させる必要があります。
フィクションでもある以上、受け手を惹き付け、感情に訴える作りが必要なのは分かります。
ただ、私は作り手の意図を上のように感じてしまったし、それが事実であるとも思いませんが、居心地の悪さと不快感を持って観てしまいました。
多くの方が称賛されている映画なので、決して悪い映画ではないと思いますが、人によっては別な受け止め方をするという意見の1つだと思って頂ければと思います。
もう少し、映画の内容に関して、拒否感ではなくストーリーに関してです。
家族という物がテーマではありますが、血の繋がりはなくいびつな共同生活というのが正しい関係かと思います。
父親的な立場である治の立場として考えた時に、治が父親として相応しいのか?というのは少し考えていました。
息子的な立場の祥太のことを可愛がり、楽しく明るく接する父親、世間で煙たがられる厳格で高圧的な父親という姿とは正反対です。
ただ、同じく子を持つ父親として感じるのは、父親という存在は「子供を真っ当に育てる」という責任を強いられるという事。
場当たり的な優しさや楽しさではなく、子の将来にとって正しいか?という考えで、嫌われても疎まれても子が正しい方向に向いてくれるように見守る必要があります。
治は祥太にとって望まれる父親でありたいのだろうな。と思って観ていました。
優しく、楽しく、面白く、そうすれば祥太は自分を求め、自分は父親になれるのだろうと考えていたのでは?と思います。
けれど、祥太はいつまでも自分をお父さんとは呼んでくれなかった。
そして祥太が警察に保護されたことで自分に追求が来ることを恐れ、逃げ出してしまう。
表面的な優しさはやはり脆い。という事を突きつけられたシーンだったように思います。
「おとうさんはおじさんに戻るよ。」という言葉は、この映画に批判的だった自分にも心に刺さる言葉でした。
父親になりたかった自分の弱さと限界を認めた一言だったと思います。
と同時に、治にとっての家族という理想が、精神的に破壊された出来事だったように思います。
ラストでバスを追いすがる治を無視し、遠く離れてからその姿を探す祥太。
力強い眼差しに、いびつな共同生活を自ら離れ、自分の意志で未来へ進む姿が想起され、この子はちゃんと生きていけるという強さを感じるシーンでした。
先に、この映画の視点を淡々とストーリーを進める視点という話をしましたが、結論を多く語るのではなく、未来を受け手に委ねる映画ではあると思います。
祥太に関しては希望を感じましたが、家族として共同生活を送っていたそれぞれがこの後、どう進むのか?
特に妹的な立場のりんに関しては絶望しか感じないです。
本当に、なんて胸糞悪い映画を見せるんだろう?と、こういう所がこの監督が合わないと感じるところです。
世の中は残酷な物。という思想をぶつけられた気がして、それは事実であれ、それを堂々と口にしていいのは経験した人間だけでは?と、言いたくなります。
最後になりますが、役者の存在感は際立つ映画でした。
樹木希林の情の深さとあざとさを併せ持つ存在感は素晴らしいです。
松岡茉優の儚さのある諦観もかなり引き込まれました。いつ崩壊するんだろう?というギリギリ感が怖さも感じる演技でした。
リリーフランキーの情けなさ、脆さ、軽さ、その一方で狂気を感じさせる死体遺棄のシーンも堂々としたものでした。
子供たち二人も良かった。
祥太のキラキラした目とりんのおどおどした目。
チョイ役のはずの柄本明の存在感も凄い。
安藤サクラも、役者としては初めて観たのですが、明るさと情愛の深さ、そして筋の通った芯の強さも素晴らしい。
母親の意味を問われ、涙を浮かべて思いを語るシーンは、画面と向き合って見入ってしまいました。
切ない
まず思ったことは、一生懸命しっかり働いて家族を養っていこうということ。何かあった時のためにしっかり保険に入って家族を守ろうということ。
葬式代は保険で賄えるし、自分が死ぬ事と交換で家族に安心を与えられる。
その他の皆はどうにか人生を(気持ち的に)幸せに生きれそうだけれど、りんちゃんだけ心配。誰かりんちゃんを救ってほしい。
カンヌっぽい
最初から最後まで同じトーン
ただ淡々と起こっていることを撮影した感じ
BGMもなし
説教くさい映画なのかと思ったらとてもあっさりとしていて、カンヌっぽいなぁと思った。
何だかんだ楽しくやっていたように見えたから、家族がバラバラになったの寂しかった
誰にも救いがなかったね
祥太の「わざと捕まった」もショックだった
あの女の子は最後に何を見たのかな
リアルであってそうでもなくて
なんだかな〜
感情がむちゃくちゃになってしまう。
リアルな質感すぎて、存在しない家族のはずなのに、
あの子は幸せに過ごしてるのかと心配してしまう
とりあえず安藤さくらがすごい。
子供たちもすごい。出てる人みんなすごい。
けど、しんどくなっちゃうので
もう1度観たいとは思わない。。。
無責任な大人たちに翻弄されて結局報われない子供達
映画自体はとても良い感じでした。
ゆったりとしていながらも、所々クスッと笑えるセリフや展開で飽きない。
飾らない日本の裏と表の光景は自然。
ストーリーについてはやや複雑な心情になります。
少なくとも「犯罪一家にも愛はあるのね」ではない。犯罪一家に限らなくても別に愛は世界のどこにでも溢れてる。
ただ問題は子供に必要な家族っていうのは愛とか絆だけではないだろう、というところ。まあ虐待よりはさすがにマシだけども、、、。
最後は救いようのない気分になりました。
やっと愛や絆を知ることが出来て、そしてそれが闇雲に壊された子供達の今後はどうなるのだろう、、、。
せめて大人達からもっと説明があれば救いようもあるのに、、、。本人達も何が起きてるのかよく分かってないような頼りなさだった、、、。
観たあと、しばらく
溜め息ばっかついてました。
(あ、もちろん、ガッカリ、、とかそういう意味の溜め息じゃなくて、腹に堪えた、、みたいな意味の溜め息ね)
いーなー、柄本佑。だって、家に帰ったら安藤サクラがいるんでしょ。
羨ましい‼(そこか(笑))
好きなんだよねー…顔と声と演技と雰囲気が。
あんまり数を観てないので、リリー・フランキーさんの芸達者ぶりにも驚かされました。
子役も可愛い上に上手い。松岡茉由(優?)はスタイルまで良い。樹木希林の怪演もミモノ。
是枝作品は「誰も知らない」「花よりもなほ」「歩いても歩いても」とか、、あれ、他にも観たかな。個人的には、「誰も知らない」と同じか、それ以上に好きかも。
ちょい役で柄本明、池松壮亮、高良健吾、池脇千鶴、森口瑶子なんかが出ていて、そのあまりの豪華さにビビりました(笑)
めっちゃ良かった。
今年は映画を50本、つまりは1週間に1本は欠かさず見る。その記念すべき1本目。そして以下感想。
おばあちゃんの葬式、松岡茉優のつながってるものは心じゃないかと問われた時「お金じゃない?普通は」と言った彼女が一番お金に執着していなかったようにも見える、彼女の嘘つくところの嫌いさ彼女は違った感想を言うだろう、俺がリバタリアンである可能性、見なかったことでそれが解決することにはならない、きっかけはなんでも良かった、みんな違う名前の誰かになりたかった、物語の共有をしない大人だちが片隅のストーリーになく不自然さならば自分で語れよ、映画の嫌いなところはイメージであるが故に日常が変わり「これ映画で見たことがあるやつ」を自分の目で事実よりそのフィルターで見ること本当は痛みのない虚構に対してわかったような気になって道半ばになること、友達も彼女も小さな嘘の積み重ねで勝手に病んでいく空気がそうさせているという宗教(虚構)に惑わされて、それをそうしなかった理由は情報格差が生み出したのかもしれない、村上春樹が抜け道がある方が良い社会だと言っていたことを思い出す、周りの反応を気にしすぎなのか俺は。
駄目なものは駄目!
何があっても遺体を隠す為に埋めるなんて行為は許されません。樹木希林がそんな事して成仏出来ると思っている?それに2度目!?驚きました。子供に万引きしか教えられないとは、随分可哀想な育ち方をしたのだと思う。教育が大事だって事を悟っていない。それ以前に戸籍すら与えられない。架空の家族。この夫婦の親、りんちゃんの親、子供への愛はあるのだろうか?あの駄菓子屋の店主のひと言で男児の心に引っ掛かるものが出来たようだ。夫婦は若く身体も丈夫で働いてお金を得る事が出来ないわけじゃないのに、前科者だからまともな仕事にも就けないのだろうか?貧困の連鎖を断ち切る為に義務教育もあるのに、虚構の家族だからそれさえ受けさせる事が出来ないのだ。現実つい最近、元戦争孤児で五島列島出身の高齢女性が無戸籍、自宅で餓死。その同居の息子さんも衰弱している状態で見つかる事件があった。息子さんは49歳。学校にも通えなかったらしい。この万引き家族の様な事はしていないだろう。ただ50年近く学校に行かなかったことも気付かれず暮らしていた事に驚愕しました。原因は戦争。実の親子で暮らしていたとはいえ無戸籍により学校にも病院にも行けず気の毒です。最後に、この映画は冷たい熱帯魚の様な気持ち悪さもあり、夫婦の考えについて行けず共感出来ませんでした。
家族の在り方
家族は一人一人血がつながっておらず、万引きなど不当な方法で生活費を稼いでいる。子どもたちは、学校にも行けておらず、家族以外の人間関係が極端に少ない。母は、子供たちを守るために引きとっていた。映画の中では家族での関係は和やかではあったが、祖母の死、万引きがばれてしまうことを機に家族関係が崩れてしまう。子を育てることは難しいと感じたのと同時に安定した生活費、親の社会的なモラル、子供への教育が安定した家族を形成していく上で不可欠だと感じた。
万引き家族
一見、万引きと年金だけで生活をしている
家族かと思いきや全員他人、でも
血の繋がっている家族以上の家族でした。
家族とは、幸せとは
考えさせられました。
どんな形でも良いので
将来幸せな家族・家庭を築きたいです。
是枝監督が描く人間関係の美しさを改めて好きになった
世間的に考えてみたら『万引き家族』というのはタブーなのに、あの家族がいつまでも続いて欲しい、とすごく願う自分がいて、やはりそれは、あの家族が貧しいながらに美しく楽しそうに暮らしていたからだと感じる。
万引きは悪いこと、でも治が凛が居やすいように彼女に仕事を与えたり、信代が職場を犠牲にしてまで凛を守ろうとしたり、凛に食事を分けてあげたり好きなお麩を買ってあげたり、一人ひとりに人間的な温かみを感じる。それは時に家族だけでなく、駄菓子屋の親父など世間の一部にも感じられるところも良い。
そして、ただただ貧しいながらに楽しく生きるだけでなく、それが初枝の死を境に急転直下で崩れていく様も、その脆さに魅了させられるところがあったと思う。この家族の内側を何も知らない淡白な警官との尋問からもなおそれが際立つ。
特に信代が尋問されたシーンは切なくてやりきれなかった。
最後に、この作品を通じて演者のプロフェッショナルさを、すごく感じた。本物の家族のように本当に思える。特に佐々木みゆさんの演技は、本当に心の傷を負った少女のようだった。みなさん、凄すぎる。
貧困を伝えたいわけじゃない
たくさん貧困問題が詰め込まれているがそれは愛や人との繋がりを濃く強く浮かび上がらせるためのオマケに感じた。
いや言い切ったけど、どうかはわかりません。
小学生並みの感想しか言えないので悪しからず。
犯罪という秘密を通して団結し、みんな本当の愛を知ったのかなって。
作中に出てきたスイミーはまさにこの家族のことなのかな。1匹の力が弱くても一致団結したら強い敵も倒せる。一人ひとりはちっぽけでも団結したら貧困という強い闇にも立ち向かえる…みたいな。
私が1番あ〜〜〜っとなったシーンはおばあちゃんがあきちゃんの親からお金をもらっていたのを知るシーン。私愛されてなかったのかなってなっちゃうんだよね…違うよ、おばあちゃんは先が長くないのもわかってて、家族みんなのためにお金を集めてたんだと思う。2人で甘味?を食べているシーンがあったけど、本当のおばあちゃんみたいだった。両親に内緒でコッソリ連れて行ってくれるんだよね。そういうちょっとの贅沢はあきちゃんにだけにしていたんじゃないかな…。一応親御さんにお金もらってるから理由がどうであれ申し訳ないって気持ちがあったと思う。
でもおばあちゃんのあきちゃんを想う気持ちに嘘はなかったと思う。作中のおばあちゃんを見ていたらわかる。誰にでも優しく自分より他人、な人に見えた。
もちろんお母さんも素敵だった。短い期間ながらもりんを本当の娘のように可愛がり愛を沢山注いだこと、誘拐をばらされそうになり潔く仕事を辞めるところ、家族のために全部の罪を被ったこと、しょうたくんに手がかりを教えたこと、全て素晴らしかった。愛がなきゃできない。
しょうたもプロ並みのテクニックを持っているにも関わらずわざと派手に万引きし捕まった。この家族の深まる闇に終止符を打った。
結局は犯罪で繋がった家族、秘密を通し団結する物はいちばん脆い。その秘密が暴かれた瞬間…。
でも重要なのはそこではなく、万引き生活を通して家族との関わり誰かを思いやること愛すること、学校じゃ教えてくれないことをたくさん学んだと思う。
文まとまらないしよくわからんけど、見終わって「面白いお話だな〜〜」ってなる映画ではなかった。考えさせられるなって映画。良いお話のことに間違いはない。
タイトルなし
家族とは何なのか、血が繋がっていれば家族なのかを考えさせる映画だった。結局ラストは呆気なく、これで終わり?とハッピーエンドではなく、見ている人に考えさせる終わり方。出演者の演技は素晴らしい。言葉に偽りはなく、飾らない。拾ってきた子なので学校にも行かせず、万引きさせるのは親として、そもそもどうなのか、許されるものでは決してない。子を持たない大人が親子ごっこをしたかったと言われても仕方ないが、そのまま放置してしまったら、もっと悲惨な運命かもしれない、人の愛情を一度も受けないで、偽りの家族も味わえなかったかもしれない。一時でも家族として笑いある幸せを感じれたことが救いかもしれない。何とも切ない映画だった。
ヘマな家族より他人の方が。
淡々と、血の繋がらない家族が万引きで生計を立て、古い一軒家で共同生活をしていく様子が描かれる。
おばあちゃんは樹木希林。夫が違う家庭に行ってしまった後亡くなり、遺族年金を貰っている。
その娘に安藤さくら演じる信代。本名ユウコらしい。クリーニングの工場で働くが賃金支払いが難しくクビにされる。
おばあちゃんが信代をどこかの時点で連れてきて育てたところから話は始まっているのかな。
信代の前の夫を正当防衛で殺し連れ出してきた信代の内縁の夫のリリーフランキー演じるオサム。本名はショウタらしいが誰も呼んでない。日雇い工事現場で働いていたがおそらく労災狙いでわざと、怪我をして、結局労災も降りず当分働けなくなる。
信代とおさむが昔パチンコ屋の駐車場の車から拾ってきた男の子がショウタと名付けられ、学校には行かれずに育てられている。
そして、おばあちゃんの元夫が新しく築いた家庭での孫にあたる、アキ。元々裕福な暮らしで育てて貰っていたように見えるが、血の繋がりがない、樹木希林演じるおばあちゃんと生活することを選んだようで、実の妹の名前さやかを源氏名にして、女子高生の格好をしていかがわしい店でバイトする18歳くらい。自虐行為の過去もあるようで、おそらく実家では愛を感じられなかったのかな。
そこに、オサムとショウタがチームプレーで万引きした帰り道、真冬の夜に外に出されている女の子ゆりを見つけ、連れて帰ってきて1人増えた生活が始まる。ゆり(本名じゅり)も全身傷ややけどがあり、虐待されていたよう。元の家に戻すのも酷で、りんと名付け直されて育てられる。
全員他人同士、そして愛のない養育環境で育ち、いなくなっても誰にも探されない者同士。
でも、家の中は誰かが誰かを心配し思いやる、愛に溢れていて。勉強は教えず盗みばかり教えていても、ろくに掃除されていない散らかった雑然とした家の中でも、ほっとする空気に満ち溢れている。そして父になるのリリーフランキーが更に何段階か生活水準を落とした感じだが、父親ではなくても中身は父親そのもの。
一方、側から見れば、異常でしかなく。こどもを学校にも行かせず万引きさせたり、元夫の息子宅に月命日を理由にたびたび出向いてお金を貰ったり、育ての親が亡くなっても届けを出すわけにもいかず庭に埋めて年金は貰い続けたり。お金のために一緒に暮らしていると思われても仕方がないし、実際半分はそうなのだろう。
ここが異常だからと出たところで行き場のない者達がかばいあって暮らして本人達が何を感じていたかの実態よりも、窃盗や死体遺棄や誘拐など、何があったかの単語にすると逆に虚しくなる不思議。どうにもならない心の飢えや貧困もある世界を理解してか、何度万引きされても捕まえず見逃していたと思われる、街の煙草と駄菓子を売るヤマトヤが忌中で閉まっている描写が、完全な普通の社会からの排他を感じさせる。
それでも、学習意欲の高いショウタは自宅で教科書を読んだり、オサムとの窃盗に疑問を持つ思春期の年頃になっていて。
窃盗に加わろうとしたりんが捕まらないようにするため、ショウタが機転をきかしておとりとなりわざと捕まるように万引きして、全てが社会の目に触れるが、そのおかげで施設に入り学校で勉強できるようになっても、心は父親がわりだったオサムを求めてる。でも、オサムもショウタが可愛いからこそ、ショウタが万引きをしくじり怪我をした入院先に、すぐに引き取りに行かずに一旦逃げてから迎えに行こうとして捕まったことを、見捨てて逃げた事にする。信代もオサムも、ショウタは入院先ならご飯もまともなもの食べられるし、一家で逃げてから迎えに行こうと話していたにも関わらず。
おさむと一緒におばあちゃんを埋めたのに、夫を庇い1人で埋めましたと言い罪を被る信代。
信代やおさむが困らないよう、おばあちゃんのことを話さないりん。施設行きが決まってからも、りんの今後を心配するショウタ。再びDV父親のいる元の家で寂しい思いをさせられる、りん。
でも、りんを連れてきたのも育てることにしたのも、当初は反対していた信代のせいにし、埋めたのも信代1人がやったことにしたオサム。
子供ができない身体のことや、自らの過去と重ね合わせて、りんに母性をたっぷり注ぐ信代が、りんといることを目撃された弱みを握られクリーニング店をクビになったり、懲役5年という損なくじを1人で引く。
本当は、オサムにもショウタにもアキにもりんにも、愛情溢れた女性なのに。
児童相談員は学校に行けば家庭にはない出会いがあると真っ当な事を言うが、家庭で勉強できない奴が学校に行くと適当な嘘を信じて育ったショウタには、学校より家庭での出会いの方がよほど親密で賢くもなるホームだろう。
うっすらぼけてきながらも、アキやりんを可愛がっていたおばあちゃんも、1人で寂しく死ぬより、みんなのいる家でアキのいる布団で老衰で他界し、幸せだったことと思う。
型どおりが幸せとは限らないし、じゃあどうすれば法的に真っ当な暮らしで愛を感じられたのかと言われれば、答えがないからこうなった、という展開で、
「子供は親を選べないが、たとえ他人でも自分で選んだ人と暮らす方が絆は強いんじゃない?」
「子供には母親が必要って大人が決めたことでしょ?産んだからみんな母親になるの?」
という信代の言葉が、法社会とは別の、真実を問いかけてくる作品。結婚も元々は他人同士。
そして、産みたくて産んだ訳じゃない、と子供が聞こえる場で言い放つ両親に育てられていたりんだが、そう言われてこう育つか、と信代が感嘆する通り、優しい子。
こどもは親がどうでも、優しさを沢山持って産まれてくる。それが尽きないよう、変わらないよう、育てるのが社会や大人の責務のはずだが、大人も気持ちにゆとりを持てない社会の仕組みのせいなのか、できていないから
、この作品のような構図がうまれてしまうもどかしさ。
是枝監督の、事実として客観的に言われると伝わり漏れてしまう、本当の物語の描き方に毎作とても引き込まれる。
安藤さくらの優しい笑みがあるお陰で作中の家庭が成り立っていたと言っても過言ではない。産後すぐの体型でもかえって母性に溢れた艶がありとても魅力的だったし、子供がいるからこそ出てくる演技もあったと思う。
全ての問いかけは信代の台詞によるし、とてもとても重要な役を自然に演じきっていて、すごい女優さん。
ショウタ役の子役の子も無駄な物がない聡明な顔立ちと無垢で真を見つめるような瞳が作品にぴったりかつ、こんな子が育つ家庭なら100%悪くはないのではないかとすら感じさせる、正当性を存在が演出していた。
でも、信代の言う、「わかったでしょ?私たちじゃダメなんだよ」が全てなのだろう。
ハッピーエンドではないけれど、素晴らしいチームによる作品。
家族って何なんでしょうね
家族について考えさせられる。
6人で海に行くシーンが本当に幸せそうな「家族」で切なくなる。でもこのままじゃダメだと思って行動したお兄ちゃんは立派。低所得者のリアルな生活を見た気がした。
『凶悪』の時も思ったけどリリー・フランキーさんの演技リアルすぎて、本当凄い。
血がつながっているだけが家族とは言えない
この家族、誰ひとり血がつながっていない。
それでも、思いやりながら生きて暮らしている。
私は、血がつながっている母親と全く合わない。
子供の頃、そんな母親に殺されそうになったことがある。
そういうこともあってからか母親から愛情を感じたことがない。
血が繋がってるんだから、母親と仲良くしなよなんて言われると心底思う。
自分なりに努力してきても何十年とうまくいかないのにどう仲良くしろと言うのかと。
血がつながっていないからこそ思いやりながら、ある意味、気を使いながら暮らしていけるのかな。
この新型コロナ感染で、収入がなくなり、どう生きていけばわからない人達が集まって暮らし、この映画のような生活があってもおかしくないと思いながら観た。
血が繋がっていても母親と呼びたくない人もいる。
信代が警察から「あなたのことを(子供達は)何て呼んでいましたか?」と言われているシーンが一番印象的だった。
母親と呼べるに相応しい人だけが子供を産めたらいいのにね。
全232件中、21~40件目を表示