劇場公開日 2018年4月14日

「この映画、新しいジャンルの幕開け。」心と体と きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0この映画、新しいジャンルの幕開け。

2019年12月9日
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鑑賞方法:DVD/BD

ちょっと重苦しいんだけど、
時々笑いが抑えきれなくなるの w
これって監督の映画作りの「観る者たちへの配慮や優しさ」ですね。

暗い画面と、ひそひそ話の舞台設定で、あー、このままじゃ最後まで観るの辛いなーと、その思いがピークになる毎に「笑い」を配置してくれて、一気にこちらは二人の応援モードに引き込まれるのです。
これは「シンプル・シモン」でも感じたことでした。「笑い」は心の緊張を緩めてくれます。緊張が緩むと人を助ける行為が少したやすくなります。

マーリアは今までセラピストとしか会話をしたことのない娘。だから職場の上司に自然に惹かれたわけでもなく好きになったわけでもない。
同じ夢を見た、それだけが彼女の心に何かを起こしたわけで。

上司のエンドレを頑なにシャットアウトしつつも内なる衝動を診察室やアパートの布団の中で自己分析し、初めての対人関係に向けての助走を試みて孤軍奮闘するマリアが見ものです。

そこに登場するCD屋のお姉さんや職場のお掃除のおばちゃんのマリアの“病状”への察し方。マリアに無理なく接するセンス。とても良いんだなぁ!

難しい付き合いになるだろうことは想像も出来るが、今は二人の笑顔をこちらも幸せな気分で見守る、それで良いし、それが良いのだと思う。何か再び事件が起こったときには我々がCD屋のお姉さんや掃除のおばちゃんになればいいんだから。

それにしても、
僕らの社会にはいろんな人がいるのだと教えてくれる映画が数多く作られる時代になりましたね。
そしてこんなにアーティスティックに、そしてスタイリッシュに対人関係障害やサヴァン症の人間を「社会人」として登場させることも出来る、そんな映画人が出てきたことは、新しい時代の幕開けという気がします。

【好きなシーン】
・ブラウスが淡い暖色になりボタンがピンクになるところ。
・リスカの彼女がエンドレの麻痺した片腕を持ち上げるところ。
・陽光を求めて人々が空を仰ぐ冒頭シーンと日陰に後ずさりしていたマーリアもエンディングでは日光を浴びる。
・テーマソング、ローラ・マーリングの「What He Wrote」。韻がとてもきれい。

きりん
NOBUさんのコメント
2020年1月12日

 この作品は静謐なトーンが、とても好きなんです。

 ローラ マーリングを知った作品でもあります。きりんさんのレビューに彼女の名前と曲名まで記載されていた事にも驚きました。
 感性が近い方がいらっしゃる事が分かっただけで嬉しく思いました。

NOBU