劇場公開日 2018年11月23日

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「ステイホーム」イット・カムズ・アット・ナイト MASERATIさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ステイホーム

2020年7月2日
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謎の病が蔓延した世界で生き延びている一家。冒頭、一人が病にかかり、家族の手によって射殺、焼却される。ショッキングなスタートと、不穏な空気感が何とも言えないオープニングである。ジョエル・エドガートン演じる父と、本来ならば青春真っ盛りなはずの17歳の息子。難しい年頃であるが反抗的な態度はとらず、何とも言いがたい関係性の家族に思えた。そこに自身も家族がいるという男が夜中に食料等を目的として不法侵入したところから生活が一変する。今後の事を考慮し、共同生活をすることになるのだ。 一緒に住む上でのルールを共有させ、生活を送っていく。

本作は、パンデミックを描いた作品なのだろうが、物理的な恐怖よりもその環境に置かれる上での精神的な疲労や恐怖を描いている。今まさに新型コロナウイルスが猛威を振るい、新しい生活様式が始まったが、本作の一家で決められているあるルールが彼らにとっての新しい生活様式なのである。そのルールというのが曖昧な物で、多くを語られず、ただそのルールを徹底して守るというのが共有事項だ。夜中に赤いドアから出てはいけないという表現が何とも不気味なのだが、その割には感染を徹底的に防ぐというような内容でもない。極めて独断と偏見によるものだった。

このルールにより、懐疑的な流れになってしまうのだが、だれも異常な状態になった様には描かれず、誰がおかしいのかは分からないままラストを迎える。しかし、直接悪事等は描かれなくとも、身の上話の中で矛盾が生じたり、感染を疑える状況になったり、細かな所でズレが生じていく様が描かれるのだ。それらがだんだんと鑑賞者を不安にさせる要素として作用していく。物語が進むごとに登場する悪夢もその一つだ。どのようにそれらが関わるのか、目が離せない展開が進んでいく。

本作は異常事態の中における人の優しさ、怖さ、異常さをあぶり出したような作品だ。一度疑うと全てが怪しく思えてしまう人間ならではの弱点を見事に描ききっている。作品は地味だが、強烈なインパクトを残す作品だった。本作の制作会社は、「ヘレディタリー 継承」のA24。この独特な世界観や空気感はなかなか真似できないだろう。今後の作品が楽しみである。

Mina