劇場公開日 2017年8月19日

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「価値あるスターダム」LUCK-KEY ラッキー 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0価値あるスターダム

2020年7月11日
PCから投稿

バイプレーヤーのヘビーローテーションを感じるときがある。
なまじっかスター俳優よりもよく見るからだ。
とりわけ日本や韓国では頻用と汎用の度合いが大きい。
おそらく他の国も、そうなのであろう──と思う。
日本ならば遠藤憲一や光石研や山本浩司etcといった俳優で、韓国は名前も知らないが──お、またこの人出てる感は、他国に倍してはなはだしい。
みんな味わい深いおっさんたちだが、イケメンをはるかに凌駕する出演率である。

気になるバイプレーヤーの名を調べてみた。花嫁はギャングスターのイウォンジョン、シルミドや食客で見たとっちゃん坊やなイムウォニ、おもしろい映画というタイトルの映画のキムスロなどは楽しかった。この独自性の高いコミカル路線で近年はペソンウが味わい深いと思う。
ギラギラ系ではオールドボーイや悪魔を見たのチェミンシク。殺人の追憶や甘い人生で見たキムレハもよじれたギラつきが個性的。
やたら顔がいいタフガイのマドンソクはさいきんは主演もはる。

この主演となったユヘジンも昔っから見るバイプレーヤーだった。
白人顔を偏重する日本社会では、その顔がアングロサクソンに近いのか、モンゴロイドに近いのかで、だいたいの美醜が決まる。
が、世界の映画業界では、むしろ露骨な蒙古顔のほうが生き延びる。ソンガンホ、マシオカ、ヒロユキタガワ、ダニエルデイキム、ケン・チョン。サンドラオー、ルーシーリュー。
この映画の主役、ユヘジンもそうだ。

顎前突、厚い唇、はれぼったい薄い目、四角い顔面、低身長、五頭身。
民族の標本のような外見で、まず忘れない。
親近感とリアリティ。とうぜん、イケメンより役者として使いでがある。主役を見たのは初めてだが、ヒョンビンと出たコンフィデンシャル(2017)も楽しかった。おそらくヒョンビンよりも忙しいはずである。

隠蔽捜査、ベテラン、黒く濁る村、どつかれて転げたりする、身体を張った役回りが多く、かつては、小物か悪漢か変人一辺倒だった。
が、同じく悪役一辺倒だった遠藤憲一が近年はコメディや真面目な人物として登用されるのと同じ理屈で、きっともう悪役はやらないだろう。
あまりに見慣れていると悪は出来なくなる。人相の悪さがネタになってしまう──わけである。
映画中TV撮影で、映画中TV女優に「顔怖すぎます」と言われるシーンは本気で笑った。

見始めるまで知らなかったがこれは堺雅人と香川照之の鍵泥棒のメソッドだった。あれは堺雅人(売れない役者)が主役で、香川照之(暗殺偽装請負人)が準主役だったが、韓国版では暗殺偽装請負人のヘジンが主役。プロットも微妙に異なる。
ゆえに見比べも面白い。個人的には日本版のほうが映画として手堅いと思ったが、こっちはこっちで別種の楽しさがあった。

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津次郎