劇場公開日 2017年2月18日

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「【狂気なる人間を知る。ダークな雰囲気と狂気のオチ。】」愚行録 3104arataさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【狂気なる人間を知る。ダークな雰囲気と狂気のオチ。】

2021年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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興奮

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・2017年公開の日本のミステリードラマ映画。
・エリートサラリーマンであった田向。家族円満で誰がみてもうらやましく思う幸せな田向一家(父、奥さんと子供2名)の惨殺事件が起こり、それから1年。犯人が全く分からず迷宮入り状態の事件を、主人公の記者 田中が、改めて周辺へのインタビューをしながら真相を追っていく。そこで明らかになってくる田向と奥さんの本性。また、田中にはシングルマザーかつ育児放棄とみなされて逮捕・精神異常を疑われてカウンセリングを受けている妹がいる。惨殺事件を中心として、妹も含めた田中の家族事情が絡み合っていく。という大枠ストーリー。

[お薦めのポイント]
・オチ(主人公が改めて事件の真相を追う意味)のゾゾゾ感が凄い
・「人間、誰しもが一見普通の振りして狂気な部分を持つもの」と凄い納得
・ミステリーとして面白い物語の流れ

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[物語]
・田向一家を惨殺したのはいったい誰だ!という基本の軸だけで物語をサクッと最後まで観れます。それに加えて、田向や奥さんの過去が洗いざらいに見えてきて「意外な一面」が露呈されていく。そして、一旦その2つに視点をずらしながらも、大きなオチが待っている。かなり良くできた、魅入ってしまう物語だと思いました。

[演出]
・独房で手に包まれる光子(主人公の妹)、終盤のカフェで窓越しに店内の行動を見せるシーン、光子の告白シーン…随所にある物語や状況を真正面から表現せずに、ちょっと斜めに切り込んでくる感じの魅せ方の作りこみが好きでした。
・全体的に昼間でもどことなくダークな雰囲気を感じさせてくれる一貫性も好きですね。

[映像]
・ドラマ系の映画なので、際立って感じたことはありません。

[音楽]
・おどろおどろしいBGMが、映画の恐怖感(≒人間の恐ろしさ)を際立たせてくれていて非常に良かったと思いました。

[演技・配役]
・妻夫木聡さんの「インタビュー中の何とも言えない反応」が独特で、最初は「え?この演技大丈夫?」なんて不安になりました。が、見続けていると、この違和感こそが唯一無二のキャラクターに感じてきて、非常に良かったと思います。あえての役作りに思えました。満島ひかりさんの実は精神異常になりきっていない「田中光子」の演技も抜群でした。「田向」役の小出恵介さんも、嫌み全開なキャラクターなのにどこか純粋で簡単に憎めないキャラクターを非常にお上手に演じられていたと思いました。

[全体]
・この映画は、登場人物たちの「本音」や「行動の真実」がはっきりすることで「スカッと」する終わりを迎えられます。が、決してその辺をはっきりはさせません。カフェ店員の本音、田向奥さんの本音、田中兄弟の本音・行動の原因・事実…ですが、割と簡単に読み解くことはできます。例えば、記者である田中が「なぜ1年経って惨殺事件のインタビューをやりたいと言い出したのか」は映画観れば大体予測がつきます(これはゾゾゾでしたが)。想像しやすいんですね。タイトル「愚行録」から察するにも、割と深めのテーマを扱っているにもかかわらず、万人に見せる映画として憶測をしやすいように優し目のミステリーにしてくれているのかな、と個人的には高評価です。
・最後に、この映画を観て私が感じたことは次のようなものでした。
 - 人は常に常識的でありながらも、ふとしたきっかけで愚かなことをしてしまう異常的さもある。
 - ある日突然精神異常になったら人間が100%変わるのではなく、常に常識的な部分も異常的な部分も持っていて、単純にその比率が変わるだけ。
 - つまり、あなたもあなたの周りの人も、誰もが愚行を犯す精神不安定な部分(異常的)と、それを隠そうとする利己的な部分(常識的)を、普段から意図的に使い分けて(共存させて)生活しているということを忘れずにね。
・ありがとうございました。

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3104arata