劇場公開日 2016年11月3日

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「ぼくの相棒、ダメおじさんはつらいよ」ぼくのおじさん みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ぼくの相棒、ダメおじさんはつらいよ

2023年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

父、母、長男、長女の4人家族宅に居候している風変りな父の弟(松田龍平)が主人公。哲学者であり、大学の非常勤講師をしている彼の不可思議な日常が、甥である長男・雪男(大西利空)の視点で、雪男のナレーションで、面白可笑しく綴られていく。

雪男と叔父の関係が面白い。ダメ男である叔父を軽蔑しているように見える雪男だが、叔父の事を作文に書いたりして叔父への愛も感じられる。二人の会話にも友人同士のような親近感がある。歳は離れているが相棒みたいな関係が垣間見える。

さらに、本作は、設定、ストーリー展開が私の大好きな喜劇映画“男はつらいよ”を彷彿させるものがある。“おじさんはつらいよ”と名付けたいような趣がある。特に、“男はつらいよ”と同様に、決して笑いを無理強いすることはせず、主人公の真剣さ、真面目さで笑いを取るのは日本喜劇映画の王道であり、真骨頂である。

両作に違いがあるのは、主人公のキャラである。“男はつらいよ”が元気な日本を背景にした多弁でパワフルな主人公だったのに対して、本作は、バブル崩壊、リーマンショック後の成熟した日本を背景にした無口でマイペースな主人公である。まさしく、映画は時代を映す鏡である。

本作の前半では、大事件は起きず、漫画、お土産、散歩、などの日常的出来事が、丁寧に描かれている。何事にも哲学を持ち出す主人公の風変わりな真剣さ真面目さが、抱腹絶倒ではないが、素直に可笑しい。松田龍平が、浮世離れして、フワフワとして掴まえ所のないダメ男である主人公を巧みに演じている。

そんな主人公も、気乗りのしなかった見合いで、見合い相手であるエリー(真木よう子)に一目惚れしてしまう。そして、甥のナイスアシストでエリーが住むハワイ行くことになる。ハワイで起きる珍騒動の数々、エリーの為に一生懸命に尽くす姿、恋敵とのやり取り等でも、主人公は至って真面目であり、その姿に自然に笑える。マドンナ役の真木よう子は、美しさばかりではなく、従来にないフレンドリーな感じで、主人公が一目惚れするのも納得の女性を好演。

失恋で終わるラストは予想通りだったが、後味の良い笑いに包まれた作品だった。何やら、本作で終わりそうもないエンドロールだったので、続編に期待したい。

みかずき