劇場公開日 2016年11月3日

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「真理を追究するひとが嘘をついてはいけない」ぼくのおじさん りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

2.0真理を追究するひとが嘘をついてはいけない

2016年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「ぼくの伯父さん」といえばジャック・タチだが、こちらは「叔父さん」。
お父さんの弟さん。
日本映画で「おじさん」といえば、山田洋次監督『男はつらいよ』シリーズの寅さん。
妹・さくらの息子・満男からみれば、叔父さんだ。
たぶん、この映画、寅さんの線を狙っている(はず)。

小学生のユキオくん(大西利空)は、周りにいる大人について作文を書く宿題が出された。
父母についてはピンとこず、妹にいたっては論外。
グータラでだらしない、哲学者で居候のおじさん(松田龍平)について書くことにした・・・

といったところから始まる物語は、子どもの目を通して観た「大人の世界の映画」かと思いきや、そこまで深くない。
単に、「ヘンな」おじさんの観察日記。
その「ヘン」さで前半は映画は保っているが、おじさんの恋愛騒動になる後半は、もう、ダメダメだめだめ、と駄目の連発。

とにかく、おじさんに対して途中から好感を抱かなくなってしまう。

きっかけは、ひと目惚れした女性(真木よう子)に「ホノルル大学から招聘されている」云々の「嘘」を言ってから。

哲学者=「真理を追究するひと」。
そんなひとが、世間の常識からずれているところから生じる面白さ可笑しさであるべきところが、「嘘」を言ってしまっては救いがたい。

なので、後半、ハワイへ行ってからのバカばなしも、結局は「世間から浮いた、いい歳した大人」の「身勝手な」行動にしか見えない。
「世間から浮いた、いい歳した大人」が、そのひとの価値観で行動するところから笑いを起こさなければならないのに。

この後半は原作にないオリジナルらしいので、映画としてのキャラクター設定が破綻しているとしかいえない。
山下監督、『オーバー・フェンス』もガッカリしたが、この作品でもガッカリしたよ。

続編を作る気満々のエンディングだけれど、まずは、嘘をついたことを反省するおじさんを描かないと、どうしようもないのではありますまいか。

りゃんひさ