劇場公開日 2016年12月10日

「激動の時代を駆け抜けた男達の熱情物語」海賊とよばれた男 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5激動の時代を駆け抜けた男達の熱情物語

2022年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

さすが。永遠の0と同じ、主演・岡田准一、監督・山崎貴、原作・百田尚樹、という顔ぶれが、期待以上の感動作を生み出してくれた。

本作は、日本の戦前、戦中、戦後を通して、石油産業の発展に人生を賭けた国岡商店店主・国岡鐵造の半生を壮大なスケールで描いているが、単なる半生記ではない。日本の昭和史、石油産業史を踏まえた、飽きることのない起伏に富んだストーリー展開と多彩な登場人物で、硬派な骨太群像劇に仕上がっている。特に、主人公達が、海外大企業に技術力と団結力で対抗していくシーンは、自動車、電機などの日本メーカが、戦後歩んできた道程そのものであり、セミドキュメンタリーを観ているようである。

戦前、戦中、主人公は、海外大企業との闘いに苦戦しながらも、社員一丸となった団結力と技術力で、徐々に石油ビジネスを拡大していく。しかし、終戦を迎え大きな岐路に立たされる。それでも彼は、熱い想いと不屈の闘志で、旧日本軍が備蓄していた不純物だらけの石油を汲み出すビジネスを起点に再生していく。そして、国岡商店は、度重なる海外大企業の妨害を受けながらも、戦後の日本復興と呼応するように、日本を代表する企業に成長していく。

どんな苦境でも決して諦めない主人公・岡田准一の熱く迫力満点の演技は画面から迸るようであり、泣かせる台詞、格好良い台詞が満載で、胸が熱くなりっ放しだった。

そんな岡田准一を盛り立てていたのは、脇を固める主役級を揃えた個性豊かな豪華な俳優陣である。特に、主要メンバーが国岡商店に入社志願するシーンは、設定は異なるが、七人の侍を彷彿とさせるものがあり、彼らは、予想通り主人公の夢を実現するサムライになっていく。更に、敵役の國村隼の存在感は出色だった。見た目は紳士的で温厚な雰囲気なので、主人公への辛辣で意地悪この上ない台詞が、より一層憎々しかった。そんな彼が、純国産企業に拘る主人公を気遣うシーンには、日本人としての連帯感があり、図らずも感動してしまった。このシーンで、本作の助演男優賞は彼に決まりだと得心した。

見どころが多い本作の中でも、最も印象的だったのは、石油塗れになりながら、必死にバケツで石油を汲み出す国岡商店の人達の姿である。彼らの汲み出した石油の一滴一滴は、正しく大河の一滴であり、それは、やがて大きなうねりとなり、ついには、戦後の日本復興という大河となって現在に至っていると思うと涙が止まらなかった。

みかずき