劇場公開日 2016年12月10日

海賊とよばれた男 : インタビュー

2016年12月7日更新
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岡田准一が語り尽くす、山崎貴監督への絶大なる信頼と揺るがぬ愛情

「永遠の0」を興行収入87億6000万円の大ヒットへと導いた、山崎貴監督と主演・岡田准一が、2013年度本屋大賞第1位を獲得した「海賊とよばれた男」の実写映画化企画で、約3年ぶりにタッグを組んだ。山崎監督から「共に戦ってほしい」と熱烈なオファーを受けた岡田が今作にかけた思い、そして山崎組への揺るがぬ愛情を熱く語った。(取材・文/編集部)

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「映画は愛なんですよ、愛!」。臆面もなく筆者に言い切る岡田は、撮影現場で国岡鐡造として威風堂々と居続けた姿そのままだった。そんな岡田にとっても、オファーを受けたときには「え? 僕ですか?」と何度も聞き直すほどの衝撃を受けたという。

「原作は読んでいたので、この本を山崎監督が映画化すること自体が難しいチャレンジであると分かっていました。監督から『一緒に戦ってほしい』と言って頂きましたが、最初は大変でしたね。監督、プロデューサーの方と何度も話し合いました。最初の本読みはひとりでやったのですが、セリフを言っているのを監督が見てくださったりして。60代の鐡造のキャラクター像を探すことに、最初は考え過ぎてしまい苦労しました。国岡鐡造がなぜ海賊と呼ばれたのか、国岡を海賊たらしめたのは社員であり、会社であるわけです。ひとりじゃない。撮影が始まってから吉岡秀隆さん、小林薫さんら皆さんと一緒にどう関係性を構築し、キャラクターを膨らませていけるかを試行錯誤しているうちに、国岡と同じ『皆で作っているんだ!』といった心境に至れて楽になりましたね」。

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原作は実話をもとにしており、国岡は出光興産創業者・出光佐三氏という立志伝中の人物がモデルだ。岡田は青年期から晩年の90代までをひとりで演じきり、なかでも本編の半分以上を占めた60代のメイクは、特殊メイクと髪や髭のセットを合わせると約3時間を要したという。その間、眠ることは一切なく、鏡をにらみつけたまま微動だにしなかったそうで、山崎監督をあきれさせている。

「ただの伝記ものではないし、すごく格言めいたことを口にするので、おとなしく演じると埋もれてしまう。ただし、良い事を言う時に『良い事を言っています』とならないように留意しなければならなかった。最初は体を絞って、割と細めでやりたかったんですよ。でも早めの段階で、それでは演じ切れないと思って、貫禄を出すために体重を増やす方向へと切り替えました。(劇中で国岡商店内に掲げられている)侍の心を持って商売をする“士魂商才”という言葉が引っかかっていたんです。侍の時代は終わったし、戦争にも負けたけれど、それでも復興していく時代を(劇中で)生きていくなかで、侍の心というものは自分の中で外せない部分でした」。

撮影現場では空き時間でも“店主”として振る舞い、役どころと同じ北九州弁を使いながらスタッフに話しかけ、神妙な面持ちを浮かべながら歩き回る姿が見受けられた。岡田が「国岡でいるということを現場が許してくれたんです。『永遠の0』の時は、役どころもあってスタッフとほとんどしゃべらなかった。今回は『前回と違って話してくれるよ』みたいな感じで喜んでくれた」と話す通り、現場を訪れた筆者は、スタッフが「店主、座ってくださいよ。もうお年なんですから」と席を譲るほほ笑ましい一幕を目撃している。

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個性あふれる名優たちの共演、山崎組ならではのCGやVFXの進化など、今作における見どころを挙げればきりがないが、その中でも最も特筆すべきは映画俳優・岡田の存在感にほかならない。

クランクアップ時に「25歳から35歳までは、役者として認めてもらえるように頑張るというのが自分の目標でした。その時期が終わって、また新たな10年がスタートするという気持ちの時にオファーを頂いて、『共に戦ってほしい』と山崎監督に言ってもらえたことが自分の中ですごくフィットしたんです。これからの新たな10年をどう進んでいくのかという始まりの映画になった」と語っているが、ここで冒頭の「映画は愛なんですよ、愛!」という熱量を帯びた言葉に立ち返る。

「みんな、良い仕事がしたいと思って集まってきているし、僕らもいい芝居がしたいと思ってきている。だからこそ信頼し合える。それに監督は無理やり取り繕うことがなく、嘘をつかない。すごくナチュラルだから、芝居の心に対しても、画に対しても的確なんですよ」。

岡田が全幅の信頼を寄せる山崎監督は、撮了時に“店主”のことを「常に挑戦している人。特に今回の映画はチャレンジだらけ。それでもしっかりと乗りこなしてくれた。岡田くんのキャリアの中でも非常に珍しくて、ハードなチャレンジだったと思います」と手放しで称えている。

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「無茶ぶりの連続だった」と山崎監督が振り返ってはいるが、岡田にしてみれば「もし山崎監督じゃなかったら、僕は国岡鐡造という役をお引き受けしていなかったんじゃないかと思う」というほどの覚悟をもって快諾した以上、どんな要求にも応えようという気概を持ち続けていたはずだ。

「お話を頂いた当初に『僕ですか?』と思いましたし、自分じゃない方が作品にとっていいんじゃないか、原作を汚さないんじゃないかと考えた事もあります。ただ、監督が誘ってくれたという事が、一緒に戦ってほしいと言ってくれた事が嬉しかったんですよね。『永遠の0』をやっている時に原作を読んでいて、『(自分が演じた)宮部が出ている』って思ったくらいで、まさか自分が演じるとは思っていませんでした。本当に、信頼と愛情ですよね。そう思える監督と仕事をさせてもらえるという事は、幸せな事ですよね」。

相思相愛という表現以外が思い浮かばないくらい、2人の間にある絆は強い。近い将来、きっと実現するであろう3度目のタッグはもちろんのこと、数年後に不惑を迎える岡田に山崎監督が一体どのような作品を携えて待ち構えているのか……、期待は高まるばかりだ。

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