劇場公開日 2016年6月4日

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団地 : インタビュー

2016年6月1日更新
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岸部一徳、藤山直美と息ぴったりの夫婦役、阪本映画の現場を語る

人間ドラマの名手・阪本順治監督が、2000年の映画賞を多数受賞した「」の藤山直美を16年ぶりに主演に起用し、藤山のために完全オリジナル脚本を書き下ろした新作「団地」。漢方薬局を畳んで団地に引っ越した夫婦の物語を軸に、団地の住人たちの奇妙な人間関係が展開し、アッと驚く奇想天外なラストが訪れるコメディタッチの会話劇だ。藤山演じる生真面目な妻と、どこか浮世離れした夫役で抜群の掛け合いを見せるのが、岸部一徳。「とにかく、阪本監督と藤山直美さんの映画を一緒に作れるのが楽しみだった」という岸部が、公開を前に作品を語った。(取材・文/編集部)

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日本を代表する喜劇女優の藤山とは「」をはじめ、これまでドラマでも共演経験があるが、映画での夫婦役は今回が初めて。40年来の付き合いがあるそうで、長年連れ添った夫婦の間合いを、関西弁でユーモアたっぷりに演じている。「団地に住んでいる夫婦の設定で、奥さんが(藤山)直美ちゃんというだけで、すぐに雰囲気はつかめましたし、彼女と一緒に演じれば、自然に夫婦に見えるんです。お互い関西人ですし、言葉の不自由さもありません。(物語の)最初から最後まで二人で演じたのは初めてですが、とてもやりやすかったですね」

主人公・山下ヒナ子の夫の清治は、植物図鑑を片手に近所の林を散策するのが日課。ある日団地内で起きた出来事がきっかけで、「死んだことにしてくれ」と床下の収納庫に身を隠してしまう。一見、どこにでもいそうな初老の男だが、同時に世捨て人のような不思議な雰囲気をまとっており、岸部の名演を存分に楽しめるキャラクターだ。岸部自身も「こういう人になりたい」と思うほど気に入った役だという。

「今回の役(清治)は、こんな人になりたいと思いながら演じました。漢方を作る作業は面白かったですし、ずっとこのまま生活してもよいくらいの感じでしたね。床下に潜ってくれと言われても、僕にとってあまり無理はなかったです。とんでもないことでもなく、こういうこともあるのかな、と、つい思ってしまうような(笑)。自分の中にある面白さ、こういう感じ好きなんだ、というのが良く出ている映画」と、旧知の仲の阪本監督が岸部にあて書きした人物を楽しんで演じた。

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映画、ドラマ、CMとあらゆる場面で特異な存在感を放つ怪優の役選びは、脚本を読み「自分が面白がれるかどうか」がすべて。一世を風靡した音楽活動を経て、本格的に俳優に転向し40年という長い芸歴のなか、新たに挑戦したいことを尋ねると、「新しいことをすることだけがチャレンジではなく、本来自分が持っているもの、自分のこだわりを最後まで突き通せるかということのほうが、僕にとってはチャレンジかもしれません」とぶれない軸を持ち続ける。

阪本作品へは9本目の出演。「監督として評価されて欲しいけれど、評価されすぎて遠くにいかれても困るなあと、どこかで思ってしまうような愛すべき人」と親密さと信頼感を伺わせ、大楠道代石橋蓮司ら阪本映画の常連が集まった現場を「みんな長い付き合いの方たちばかりなので楽しいのですが、阪本さんには映画監督らしい神経質な部分があるので、俳優も役を演じるだけでなく、阪本映画をみんなで作っていくという意識が強い。そういう意味でも、この作品には阪本映画の良さが特に出ている」と振り返る。そして、最後にこう結んだ。「僕は長年いろんなことやっていますけど、やっぱり映画が好きなんです。映画をやっているときが一番楽しいんですよ」

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