劇場公開日 2019年1月18日

「複雑な背景にシンプルな物語」バジュランギおじさんと、小さな迷子 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0複雑な背景にシンプルな物語

2019年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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インドとパキスタン国境のあるカシミール地方では、最近も大きな攻撃があった。ここは国際社会の中でも極めて緊張感の高い紛争地域の一つで、両国の溝は我々が思うよりもずっと深いのだろう。
この映画は、難しいことは少しも描かない。バジュランギおじさんはひたすらに純粋で、少女を家に送り届けることだけを目的にする。出てくる登場人物もいい人が多い。ラストは現実社会に対して楽観的すぎるという意見だってあるだろう。けれども、この両国の融和を信じる気持ちがあるのだということもまたきっと事実なのだと思う。これがフィクションに過ぎないとしても、そのフィクションを信じる気持ちが世の中を本当に変えるかもしれない。
少なくともこの映画がインドで大ヒットしたという事実はある。本当はみんな争いたくないと思っているということじゃないだろうか。
両国の複雑な事情が背景にあるからこそ、このシンプルな物語が響く。とても力強い映画だった。

杉本穂高