劇場公開日 2016年1月30日

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俳優 亀岡拓次 : インタビュー

2016年1月12日更新
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安田顕&麻生久美子、横浜聡子監督のポップな世界観にそろって感銘

安田顕と麻生久美子。日本映画に欠かせない男女が、脇役俳優の悲喜こもごもを描く「俳優 亀岡拓次」で邂逅(かいこう)を果たした。人気演劇ユニット「TEAM NACS」の一員で、テレビドラマ「下町ロケット」のほか、「龍三と七人の子分たち」「映画 ビリギャル」「新宿スワン」と作品ごとに違った顔を見せる安田。そして、「ラブ&ピース」「グラスホッパー」に加えアニメ映画「百日紅 Miss HOKUSAI」「バケモノの子」では声優もこなし、芸幅の広さを見せ付ける麻生。初めて本格的に共演した感想や、本作のメガホンをとった横浜聡子監督の作風の魅力を聞いた。
(取材・文/編集部、写真/堀弥生)

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「ウルトラミラクルラブストーリー」(2009)で話題をさらった横浜監督がそのイマジネーションを最大限に発揮した「俳優 亀岡拓次」は、不思議な味わいの作品だ。コメディ、ラブストーリー、ファンタジー……さまざまな要素をふんだんに盛り込み、玉手箱のような輝きを放つ。

大作から自主映画まで、オファーがある限りどんな役でも駆けつけ、監督から重宝される脇役俳優・亀岡拓次(安田)。物語は、亀岡がロケ先で出会った飲み屋の女将・安曇(麻生)に恋心を抱く姿や、世界的な巨匠からオーディションの声がかかり、亀岡の俳優人生に大きな転機が訪れるさまを描く。

ほぼ全編にわたり、安田は画面に出ずっぱり。酒をこよなく愛する寡黙な酔いどれ俳優を時に軽妙に、時に渋さを含んだ演技で魅せる。一方の麻生は、どこかさみしさを漂わせた女将をつやっぽく演じ、“マドンナ”の響きがぴったりな存在感を発揮。2人が撮影を共にする時間は決して多くはなかったというが、安田は「麻生さんといると、『この時間が終わってほしくない』と思う。ひきつけられる素敵な役者さんです」と濃密な時間を過ごせたと振り返った。

「麻生さんは、21世紀のグレイス・ケリーのようです。内面の品とか清楚(せいそ)さが、ご本人は気づかれてないかもしれないけど出てるんです。『スクリーンには人の内面が現れる』とよく言われるけど、麻生さんを見ていてまさにそうだなと思いました」(安田)。劇中では、亀岡と安曇は基本的に飲み屋のカウンター越しに会話するが、安田は「(ドキドキしちゃうから)カウンター越しに話すのがちょうどいい。今この瞬間も、麻生さんが隣にいらっしゃるからドキドキしちゃって」とはにかんだ。

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対する麻生は、亀岡ともシンクロする安田の卓越した演技力を指摘。「安田さんは、見た作品ごとに印象が変わるカメレオン俳優。クレジットでお名前を確認しないとわからないくらい。役とご本人にもギャップがありますよね。その才能がうらやましい」。多数の作品で存在感を放つ亀岡の姿を安田と重ねあわせていたというが、安田本人の明るいキャラクターに触れ「現場ではぼそぼそと話す印象だったのに」とその違いに驚いたそう。その言葉を受けた安田は、「電車に乗っていても、『あれ誰だっけ?』って声が聞こえてくるんですよ」と“リアル亀岡”エピソードを語った。

劇中では亀岡のぎこちない恋心が見る者の共感を誘う一方、亀岡と安曇が夢ともうつつともわからぬなかでダンスを踊るというファンタジックなシーンも用意されている。大きな見せ場と言えるが、麻生が「横浜監督の指示に従ったのですが、『不安そうにしていてください』と言われて。そこから亀岡さんとダンスして、安曇が笑顔になる。ダンスシーンの撮影はとっても楽しかった」とほほ笑む隣で、安田は「『終わらなきゃいいのに……』と思った」とまたもや口惜しそうに語る。

そんな安田は、本作では麻生だけでなく宇野祥平、新井浩文、染谷将太、浅香航大、杉田かおる、工藤夕貴、三田佳子、山崎努といったそうそうたるメンバーと共演。「それぞれにいろんなアプローチがあって、主演をすることでそれを受けられるのが、振り返ると楽しかったですね」と語るが、当初は約6年ぶりの長編となる横浜監督の独特な世界観や演出に「全編を通してわからないセリフがあった」と告白。亀岡を理解するには時間がかかったようだ。

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そんななか、横浜監督のある演出が役を理解するきっかけになった。「染谷君(演じる若手監督)とのやり取りで、『アドリブでやってください』『はい』と答えるシーンがあるのですが、そこを間髪入れずにやってくださいと(横浜監督に指示された)。『亀岡さんは動物です。何考えてるかわかんないんです』と言われて。そのシーンのときに『あ、亀岡(のキャラクター)ってこれなんだ』と思いましたね」。

一方、ミュージックビデオも含めれば横浜監督とは3度目のタッグとなる麻生は、本作での監督の変化として「おしゃれ」をキーワードに挙げる。「ビジュアル含めて、ポップだなと思いました。シーンの切り替わりなどもテンポがよくて見やすい。脚本だと渋い印象があったので、こんなおしゃれに仕上げるんだなと意外でした。皆さん見やすいでしょうし、私は好みでした」。麻生の言葉に同調した安田は「横浜監督は、こちらの予想の半歩先を行く。もっと色々な作品を撮っていただきたいですし、日本映画界を代表される監督になるはず」とすっかり魅了された様子を見せた。

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