劇場公開日 2017年5月20日

  • 予告編を見る

「不完全さが味わいのもと」夜に生きる つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不完全さが味わいのもと

2023年11月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

原作はデニス・ルへインの同名小説。
チーム「We love Boston!」による映画制作、という趣なのかもしれない。

観る前は気にもとめていなかったのだが、彼が原作の映画を全て観ていたことにちょっと衝撃を受けた。
私もボストンマニアなのだろうか…。

ボストンでケチな強盗稼業を営んでいたジョーがマフィアとしてのしあがっていく話であると同時に、険しくも厳しい愛に翻弄される話でもある。

「夜に生きる」のジョーは戦地で心に傷を負ったことにより、自分の生きる指針を決めている。
「誰かの決定に従って、望んでもいないことをやって、それで苦しむのはゴメンだ。自分は自分のルールで決める」
その決定は一見ハードボイルドでアウトローな男の生きざまなのだが、もうこれ以上傷つきたくない、という弱さでもある。
その辺が、なんかこう、女心にグッとくるのか、危ない男なのに女性たちはみんなジョーに甘い。「悪い男だけど、好い人」みたいな評価であっという間にラブラブ。

禁酒法時代のアメリカで、宗教や人種の対立も色濃い中、世間のしがらみや常識にとらわれず、自分のルールだけを胸に生きているジョー。
夜に生きるからこそ自由で、夜に生きるからこそ非常な対価を支払う。

日のあたる世界で地道に結果を出した兄との対比が、ジョーの人生の影を際立たせ、そこがとても味わい深い。
私はアウトローな男はあんまり好みじゃないが、ジョーなりにベストを尽くそうという姿勢はなんだか愛しい。

多分、今回制作に名を連ねてるレオ様とかも含め、お気楽ハッピーエンドとはほど遠い「デニスワールド」には映画関係者を魅了する「ひと味違う」感があるんだろう。
何だかんだで全作品観ているあたり、私もその「ひと味違う」感を求めているのだと思う。

昼に生きる者も、夜に生きる者も、痛みとともにある。
どちらを選んでも不完全、だがそこが良い。

コメントする
つとみ