劇場公開日 2014年9月27日

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「俳優陣の渋い演技に話が追いつかなかった感がある作品。」ファーナス 訣別の朝 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0俳優陣の渋い演技に話が追いつかなかった感がある作品。

2014年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

良かった。
…俳優陣の渋い演技は。

閉塞感の強い鉄鋼町。
限られた選択肢の中で先の見える人生を真面目に送る兄。
町を離れて戦場で心に傷を負った弟。
弟が状況を打開しようと泥沼でもがき。
家族想いの兄が手を差し伸べたことで、という本作。

家族の絆が足枷となり苦悩し怒りを押し殺す兄ラッセル。
演じるクリスチャン・ベールが渋くて良かった。
言葉少なな彼が表情で見せる感情は重くズシンとくるものがあります。
思い詰めた彼が行動を起こす時。
スッと憑物が落ちたような顔は寂しく哀しいものがあります。

そして敵役のデグロート。
更に閉塞感の強い山間部。
独特のルールの中、力で勝ち残った男。
冒頭から描かれる凶暴性。
不敵な存在感、貪欲さ。溢れる生命感。
ウッディ・ハレルソンが見事に演じています。
トゥインキーを食べ過ぎたせいか、話が通じない感がビンビン出てました。
また終盤間際にあるデグロートの薬物投与の詳細な描写。
裏で起きている緊迫した状況との対比も含めて良かったです。

脇を固める俳優陣も良く、「黒い笑福亭鶴瓶」ことフォレスト・ウィテカーも渋かった。
彼のオロオロして何も出来ない感じ、一方で寂しい女性を狙う小狡い感じも作品に華を添えていました。

惜しむらくは話の構成/展開。

兄ラッセルに襲いかかる不条理。
彼の中に苦悩や怒りが溜まっていく姿が静かに緩やかに描かれます。
が、或る時点を境にテンポがグッと上がっていくのですが。
テンポと共に盛り上げるべき話の内容がシックリこない。
兄ラッセルの行動も、敵デグロートの行動も理解が難しくなり置いてけ掘に。
話が終わった際に胸に残るのは閉塞的な話がもたらすモヤモヤ感とは別の…未消化感。
俳優陣の渋い演技が良かった分、残念でした。

俳優陣の渋い演技に話が追いつかなかった感がある本作。
真綿でジワジワ首を絞められるような中盤までは観ていて息苦しくなること請け合いです。
広げた風呂敷が畳みきらなくても良い方。畳み方を然程気にしない方。
オススメです。

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Opportunity Cost