劇場公開日 2014年10月18日

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グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 : 映画評論・批評

2014年10月14日更新

2014年10月18日よりTOHOシネマズ有楽座ほかにてロードショー

キッドマンがナルシズムで具現化する、演じ抜いた公妃の姿

かつて"グレース・ケリーの再来"と言われながら今や起業家と化したグウィネス・パルトロウから庶民的すぎるリース・ウィザースプーンまで、主役候補が現れては消えていく中、監督のオリビエ・ダアンニコール・キッドマン側からの依頼でスカイプ面談して、即決。こうして始動したモナコ公妃物語は、監督が確信した通り、クローズアップで主人公の心理を物語れる究極のナルシスト、キッドマンのほぼワンマンショーの趣きだ。

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ハリウッドからモナコに嫁いで6年目の、すでに不自由さと孤立が極まった挙げ句の憔悴感、コンサバな王室とその周辺に対するフラストレーション、旧友ヒッチコックから「マーニー」の主役を打診されて女優復帰を決意する時の高揚感と、それが何者かのリークによって頓挫した時の失望感。しかし、モナコがフランスの属国に堕ちかけた時、女優として培った名声を有効利用し、公妃を演じ抜くことで国を守ろうとするグレース=キッドマンは、それ以前とは明らかに目の輝きが違う。受け容れがたかった公妃としての生活が、一転、演じ甲斐のある晴れ舞台に形を変えてその眼前に迫ってきたかのようだ。

評伝ではお馴染みのグレースと彼女を生涯認めなかった厳格な父親との確執や、今なお謎めいた突然の事故死など、生々しい事実の解明を期待すると大きく裏切られる。これは、いわゆるバイオグラフ映画ではなく、勿論、ドキュメンタリー映画でもない。女優ニコール・キッドマンが強烈なナルシズムをテコに、亡き公妃に自分と同じ演じる快感を見出し、表情で具現化した、ある種の帰依映画。それは、すべての女優に課せられた宿命だろうし、翻って、我々が何気なく重ねている日常の真実かも知れない。誰しも他人がイメージする自分を無意識に演じているという。

清藤秀人

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