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女の逞しさを健やかに祝福する、J・オーディアールによる女性映画
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  脚を失くして心を奪還するビッチの成長譚ーーなんて、泣かせる美談ではすまない荒涼を世界と人の輪郭に滲ませてジャック・オーディアールの新作は噛みごたえあるメロドラマとなっていく。

  額のニキビも誇らしげに素顔のマリオン・コティヤールが悲劇をかいくぐるマリンランドの調教師、そのタフさを快演する。男の視線を集めることを退屈しのぎとしていたヒロインが自慢の脚をシャチに奪われる。失意の底で彼女は意外にも、かつてそのむき出しの脚めがけ「娼婦」と直截な言葉を浴びせたクラブの用心棒を呼びつける。そこから始まる再生の物語はそんなふうにゆきずりの男に救いに至る何かを嗅ぎ当てた女のしぶとさを健やかに祝福し、ありきたりの道筋を逸れていく。それが寒色の男の映画の印象が強いオーディアールの女性映画の醍醐味となる。

  ビーチに置き去りにされたヒロインは気ままに泳ぐ男の自由をはねつけず、いっそみごとに彼の自由に染まる。光を大気を呼吸してあっさり裸になって泳ぎ出す。指笛で男を従えつつ――。そんな女の逞しさがぞくりと凄みを伴って迫ってくるのが男が飛び込んだ闇の格闘技の一場、血肉が飛び散るサバイバルの現場の危なさに闇雲に惹きつけられ、鋼鉄の義足の彼女が歩み出す瞬間だ。「グリフターズ」のアンジェリカ・ヒューストン、「四十挺の拳銃」のバーバラ・スタンウィックにも匹敵する、年増女の世界をなぎ倒すばかりの迫力をコティヤールが体現、痺れさせる。このヒロインの後をやさしい男の再生の物語が追う。氷を素手で叩き割り拳に血をにじませて回復される人でなしの男の鼓動。伴走するヒロインの鼓動をも思わせて、監督オーディアール、またしても心憎い佳作をものしている。

(川口敦子)


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