劇場公開日 2012年7月21日

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灼熱の肌 : インタビュー

2012年7月17日更新
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モニカ・ベルッチ、出産直後の撮影秘話語る

ヨーロッパとハリウッドをまたにかけ活躍しているモニカ・ベルッチと、ヌーべル・バーグの後継者、フィリップ・ガレル監督の組み合わせというのは、かなり意外だ。新作「灼熱の肌」ではそんなコンビがしかし、いかにもこの監督らしいテイストの、男女の不毛な恋愛を描き切る。監督の息子である、29歳の俳優ルイ・ガレルを相手に、年上の奔放な恋人にして女優であるヒロインを演じたベルッチは、第二子の妊娠によって撮影をずらしながらも、出産直後、授乳しながら本作を取り上げたという。そんな彼女に本作の体験、ガレル監督との仕事ぶりについて訊ねた。(取材・文/佐藤久理子)

——最初にガレル監督の方から依頼を受けたときは、どんな印象を持ちましたか。意外な気持ちがしましたか。

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「そうね、でも彼の映画についての知識はあったわ。わたしはまずこのストーリーに引かれたの。ただ夫(ルイ・ガレル)と妻の年齢がかなり離れていることにちょっと驚いたので、そこに特別な理由があるのかとフィリップに尋ねた。彼は『特に理由はない。年の差は映画の主題ではない』と。これがアメリカならわたしとルイの年齢差は大きな話題になるかもしれないけれど、幸いヨーロッパではあまり問題じゃない(笑)」

——あなたが演じるアンジェルという女性は、どんな人だと思いますか。

「いつも人から注目されている、ちょっと子どもみたいなところがある人。彼女の職業が女優というのは偶然じゃないわ。女優は人から注目されるのが好きだから(笑)。でも彼女はとても繊細でもある。わたしにとってもこれは特別な体験だった。撮影に入る1カ月半前に子どもを生んだばかりだったから。撮影中も母乳を2時間ごとに与えていた。そんな状態で、映画のなかでは男性を誘惑するような正反対の女性を演じていたの。でも演じるキャラクターが自分とはかけ離れているほど、演じる方にとっては面白いものよ」

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——ガレル監督はどんな風に俳優と仕事をするのでしょう?

「彼はとてもユニークな監督よ。自分が欲することを成し遂げる。だから一緒に仕事をするのは、彼のクリエイティブな世界の一部になるということなの。でも同時に、俳優のことが大好きで守ってくれる。撮影前から俳優とたくさん話し合い、リハーサルに時間をかけ、一緒にキャラクターを作り上げる。だから俳優同士もお互いをよく知り合うことができるの。その後セットに来てからは、ただ1テイクしか撮らない。『最初のテイクがベスト。そこに直感的なものがあるから』と言って。こんな風に仕事をしたのは初めてだったわ」

——彼は自分の映画で、画家のように女性の魂を描きたいと語っています。この映画であなたの魂が描かれたような気がしますか。

「そうかもしれない。とにかく、これまでとは異なる気持ちになったわ。それは彼の映画のカメラと俳優の関係に拠るのかもしれない。それにこの映画は女性らしさや官能性に溢れているわ。たとえすべてがとても控えめだとしても。監督自身がとても控えめだから、映画も控えめな表現になるの。たとえばルイとわたしが演じるカップルの関係は強烈だけど、セックスシーンもキスシーンすらもない。それでもすべてがとても濃厚。それこそマジックだわ。この映画が気に入る、気に入らないに拘らず、見た人にはマジックな瞬間を感じてもらえると思う」

——プレミア上映が行われたべネチア映画祭(2011年)では、冒頭のヌードシーンが大きな話題になりましたね。

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「何も起こらないヌードシーンがなぜこんなに騒がれるのか、わたしには理解できないわ(笑)」

——たぶんとてもミステリアスなシーンだからだと思うのですが、わたしはあのシーンにこれまでのガレル映画と共通する真髄が表れているような印象を持ちました。監督はあのシーンを撮るときに、何か彼の過去の映画のことなどについて語りましたか。

「いいえ、そういうことは話さなかった。でも彼の映画ではつねにアート、政治、愛、人間関係がテーマになっている。この映画の目的のひとつは男女の関係の難しさを描くこと。わたしはそこにとても共感を覚えたの。自然体というのは自分自身でいることだけれど、カップルでいる場合、それはとても難しいことだと思う」

——さきほど、女優は注目されるのが好きだとおっしゃっていましたが、あなたのなかにもそういう部分はありますか。

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「スポットライトが好きな女優はたくさんいるけれど、わたしは違う。それに俳優がイメージの自分と本当の自分を混同するのは痛ましいことよ。たしかに現代はプレスによってイメージが作られ、それが大衆に伝わるともう自分ではコントロールできない。でも俳優自身がそれを混同してしまうと、とても危険だと思うわ」

——マスコミや大衆が作り上げるイメージとあなた自身の姿との落差がある場合、気になりますか。

「それは気にならない。それにわたしは自分の記事を読まないの。とても退屈だわ(笑)。自分自身について考えているだけで十分よ(笑)」

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