劇場公開日 2012年10月26日

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「あえて16ミリで撮影し、編集で35ミリにブローアップした画面のざらつき」アルゴ えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0あえて16ミリで撮影し、編集で35ミリにブローアップした画面のざらつき

2023年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

(13.1.25劇場鑑賞)

1980年、CIAの諜報員が、反米高まるイランから6人の米外交官を国外脱出させるために、奇想天外な作戦を断行する。1980年に勃発した在イラン アメリカ大使館占拠事件の史実に基づく物語。

傑作。
このひとことに尽きる。

ハラハラドキドキのエンタテイメント性も然ることながら、中東に象徴される善意によるスタンピードの恐ろしさ、それを引き起こした世界の警察たるアメリカの功罪に関する内省、更にはひとりの男の再生ドラマ、偽映画をモチーフとしたハリウッドへの冷笑、そしてその背景にあるベン・アフレック自身の栄光と没落などなど、色々なことが、実に緻密に計算され、それぞれが干渉せずにそれでいて相乗的に丁寧に描かれている。

セットや衣装、時代考証の秀逸さはもちろんのこと、1980年代の風情を出すために、あえて16ミリで撮影し、編集で35ミリにブローアップした画面のざらつきが観客を支配する。

監督・主演のベン・アフレックがとにかくカッコいい。女房子供に逃げられた、脱出専門のCIA諜報員。大胆な発想、緻密な計画、愛と信念に満ちた行動が三位一体で溶け出し、無表情でぼうぼうのひげ面が口数少なく、だが雄弁に物語る。本作で、次のイーストウッドを狙える人材、との評価を獲得した。

6人の外交官を描き過ぎなかったところが素晴らしい。更に、6人を匿うカナダ大使を演じたヴィクター・ガーバー、ベン・アフレックの上司役のブライアン・クランストンがいぶし銀のいい味出してる。

作品賞や助演男優賞など、いくつかの部門でノミネートされているアカデミー賞。どれかひとつでも、取らないかなー。

(19.9.14 二度目)
人間は自分と違う人間が怖い。言葉、信仰、服装、人種、街並み。侵してはならない領域があって、そのきっかけはアメリカがつくっていて、欧米人とは全く違う人々が忘我するほど怒っていて、その中で同胞を救出を成功させたCIAが賞賛される。2時間があっと言う間に過ぎるスリル満点の作品は見事の一言に尽きるが、少しだけ「なんだかな」と感じた、6年後の感想。第85回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、編集賞を受賞とのこと。

えすけん