劇場公開日 2012年2月25日

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ヤング≒アダルト : 映画評論・批評

2012年2月21日更新

2012年2月25日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

勘違い女の不快さと痛さが、次第におかしく思えてくる

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JUNO ジュノ」の脚本家が生み出した今度のヒロイン、メイビスは、途方もなくハタ迷惑な女だ。30代半ばでバツイチ、美人だがだらしない日々を送る、ヤングアダルト小説のゴーストライター。こんなはずじゃなかった。高校時代は憧れの的だったのにッ。つまり書く小説の主人公は彼女自身で、頭の中はそこから1ミリも成長していないのだ。身勝手な思考回路は元カレから届いた「赤ちゃん誕生」メールをSOSと解釈、カレを奪取すべく帰郷する。

うわ、痛い、という勘違い女の不快さが、その徹底した痛さによって次第におかしく、痛快に、哀れに思えてくるのが妙味。常軌を逸した彼女なりの言い分が、観客の中の「大人になる=分別くさくなること」に抵抗したい部分をくすぐってくる。毒のあるキャラを突き放しながら愛憐の情をも注ぐ、ライトマン監督のバランス感覚が絶妙なのだ。

さらに小気味よいのはこの怪物キャラの言動が観る側の想像を見事に裏切り、結果、映画自体も「こうあって当然」という方向を軽やかに逸脱するところ。メイビスと同じく(だが正反対の理由で)過去に囚われた元同級生、マットとの、いびつなロマンスが孕むサスペンス。そして終盤、いよいよ現実と直面したメイビスのせりふが呼ぶ仰天と爆笑! 美人がつらいとは、目から鱗。人間って、なんて複雑でオモシロい生き物なんだ。こう思えるのも、メイビスを体現するシャーリーズ・セロンゆえ。「モンスター」では美人であることをかなぐり捨てたセロンが、演技力と美貌を最大限に生かして与える説得力のなせる技だ。

若林ゆり

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