劇場公開日 2012年11月17日

「ヱヴァQは結局...?」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q オートIVさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ヱヴァQは結局...?

2023年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

寝られる

新たな「ヱヴァ」の幕が上がる...「破」の好調により高い期待をもって迎えられた「Q」はいろいろな意味でとんでもない作品だった。当時 序 20億、破 40億と倍々ゲームだった興行収入は、Qでは50億ちょっとで止まる。上映当時の激しいバッシングのせいか監督は心を壊し次回作シンの公開はそれから8年後になった。
シンによるエヴァ熱がやみ、新たな気持ちでアニメシリーズ、旧劇、新劇場版4部作を鑑賞した上で、Qに対する感想は「つまらない」でした。同じ「鬱展開エヴァ」としてよく旧劇と比べられるQですが、旧劇はちゃんとした「続編」であるのに対しQはまるでスピンオフのような印象を受けました。それまでのエヴァは一貫してリアリスティックを追求したSF作品であったのに対し、Q(とシン)では「空白の14年」という設定を盛り込むことでSFに全振りしています。更にQの展開には殆ど伏線がありませんでした。いきなり専門用語が飛び込んでくるのはこの作品のお家芸で、魅力でもあったのですが、これはあくまで物語の世界観に引き込む補助的な役割を果たしているのみで、展開自体は伏線などを回収しつつ丁寧に展開されていたのです。一方で作品を大きく変えた「AAAヴンダー」はその存在の大きさにも拘わらず全く伏線がなく、空白の14年やWILLEなどといった設定は全てヴンダーを登場させるために取って付けられた感じがします。言い換えると、制作側は「宇宙戦艦ヤマト」をやりたかっただけなのでは...と。脚本もシンの後に鑑賞してもなお違和感があります。序盤のリツコのシーンや中盤のカヲルのシーンが特に顕著で、流れ的に経緯の説明をするだろう という場面でいきなり会話が止まってしまったり、説明自体が下手だったりして、謎を楽しむ前にイライラが募ってしまいます。その割には物語は何も進展せず終わりを迎えます。バトルシーンが計器などヴンダー周りの描写にやけに力が入っていて、他の作品と比べても丁寧に展開されます。そのせいで物語の展開自体は急であるけども遅く、その結果、結局シンの冒頭で何十分も世界観の説明を行うはめになり、重要な終盤が急速に展開されていくことになってしまっています。
空白の14年も、ヴンダーのようなオーバーテクノロジーに対する説明以外に14年も経たせる理由が見当たらず、むしろ主人公を取り返しもつかないくらいに孤立させてしまっているだけだったので、正直2,3年でもよかったのでは と思います。

戦闘シーンも分かりやすい序や破の方が没入感がある分迫力があったと思います。Qは基本的に空中戦だったのに加えヴンダーが余りにも大きすぎたために何をしているのかわからないことが多かったり、相対的にエヴァが小さく見えたりしました。

最も「エヴァ」らしい作品といわれるQですが、実際には違うと思います。こんなにつまらないエヴァはないと思います。
制作陣がやりたいことを無理やりねじ込んだ結果生まれてしまった問題作。
スピンオフなら間違いなく名作。

オートIV