劇場公開日 2012年1月28日

「焼き立てのパンのように温かい映画でした」しあわせのパン スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0焼き立てのパンのように温かい映画でした

2016年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

全く派手さのない、地味で素朴な映画でしたが、素朴なパンならぬ素朴な映画もたまにはいいものですね。
北海道・洞爺湖畔の美しい自然、焼きたてのパン、芳しいコーヒーの香り、そして温かいパンカフェ経営夫妻2人の存在感、もうこれだけでホッコリ癒されました。
まあ常連客の現実感の無さに最初は微妙な空気も漂っていましたが、終わってみれば彼らもいいスパイスとなって、物語に彩りを与えてくれましたよね。
何だかこの映画を見ていたら、日常の疲れが少しだけ取れたような気がしました。

しかし原田知世に大泉洋と言うキャスティングは、とにかく絶妙且つ魅力に溢れていましたね。
寡黙で笑わせない大泉洋に序盤は少々戸惑いましたが、温かい水縞くんのキャラに思いのほかマッチして、心に傷を持つりえさんを温かく包み込む姿が本当に素敵に映りました。
これぞ夫婦の理想の形って感じでしょうか。
現実にも謎に満ち溢れている原田知世の不思議感も作風にピタリ嵌って、実際あったら行ってみたくなるようなパンカフェの雰囲気を絶妙に醸し出していましたね。
しかも宿付きですもんねぇ、朝起きてあの珈琲であのパンが食べられたら、ホント幸せだろうなぁ~。

季節ごとに描かれた各エピソード自体は、現実的なようでそうでもない、泣けそうで泣くまではいかないと言った感じの、何とも微妙な線ではありましたが、そこに漂う力強いメッセージは十分伝わってきて、思わずグッと来た部分はありました。
現実は辛い、でも1人ではなく誰かと喜びも悲しみもこのパンのように分け合うことが出来たなら、きっと立ち向かっていける、そんなメッセージ性が、本当に素晴らしかったなと思いました。

まあ現実にはあの場所でパンカフェを経営するのは、そんな甘いものではないはず。
一応冬の厳しさも表現されてはいましたが、実際はこんなものではないだろうし、私なんかが想像するよりもっと厳しいはず。
あの感じだと経営も困難を極めることは想像に難くない、しかし誰かと一緒ならきっと出来る、そんな夢のような気分だけは味あわせてもらえた作品でした。

スペランカー