劇場公開日 2011年4月9日

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ザ・ライト エクソシストの真実 : 映画評論・批評

2011年4月5日更新

2011年4月9日より丸の内ルーブルほかにてロードショー

やはり悪魔は実在するのだと信じるまでの思索の旅

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冒頭、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の言葉として「悪魔との戦いは今も続いている」という言葉が引用される。キリスト教最大の教派カトリックが、改めて悪魔と対峙せよとうながす警告はショッキングだ。ホラーやオカルトの類を期待していれば、肩すかしを食らう。娯楽映画の体裁を採っているものの、極めてシリアス。バチカンで実際に行われているという、エクソシスト養成講座を取材したジャーナリストの手記をベースに、ミステリーのオブラートにくるんで観る者に思考を求める作品だといえよう。

物語は、悪魔の存在など信じない若き神学生の視点で導入され、悪魔憑きという現象も精神の病だという解釈が披露される。なるほど禍々(まがまが)しい儀式も、実は精神分析療法であるという考え方は理にかなっている。いずれも深層心理を引き出す対話によって狂気を鎮めていくのだから。そんな先入観が、アンソニー・ホプキンス扮する伝説的エクソシストとの出会いによって覆されていくのだが、目の当たりにする憑依(ひょうい)現象の演出はオカルト映画の手法から踏み出さない。ドキュメンタリー・タッチを用いた方が、思索的な味わいは強化されたかもしれない。

神と悪魔、善と悪――ゼロ年代を覆った重苦しい空気は、その二項対立から逃れ多様な価値観を認めようという変革のプロセスではなかったか。本作の着地点は、悪魔の正体は内なる恐怖や狂気ではなく、やはり忌わしき他者として実在するのだと言わんばかり。それは、カトリックを背骨とする西欧文明が生き延びるためのプロパガンダに過ぎないと断じたなら、呪われるのだろうか。

清水節

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