劇場公開日 2011年9月23日

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「ラッセルの行動原理おかしくないか?」スリーデイズ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ラッセルの行動原理おかしくないか?

2022年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

日本ではまずありえないクライムサスペンスですね。
妻が冤罪で投獄されるなら、全力で冤罪を晴らす方向に進むべきなのに、なぜかラッセルは妻の脱獄→国外逃亡を目指すようになっていく。
その行動力たるや、殺人も厭わずというから凄まじい。相手がたとえ地元のギャングでも、彼らにも子供や家族がいるだろうに。
映画の構造的に、ラストまで妻が無実かどうかはボカシてあり、そのために観客は強いフラストレーションを感じます。ラッセルは、たとえすべてを敵に回しても、妻を守り抜くということでしょうね。

最終的には「ああ、こういうこと?」という決着を見ますが、映画の中でのハッピーエンドはありません。
冒頭で、妻がこっそりクスリを打っている描写も、実は糖尿病のインスリンで、何ら日常から逸脱していないのに、あたかも妻は薬物中毒で、衝動的に殺人を犯しても不思議ではないという伏線のように働きます。
ラッセルが計画を練っていき、綿密にリハーサルを繰り返す様には巧妙に伏線が張ってあり、決行してからの逃亡劇は最後まで息が抜けないような展開に仕上げてあります。そこは見事です。

どうやら、この映画は妻の無実を信じて疑わない男の、手段を問わない行動力と、それが破滅に向かうのか成功するのかの瀬戸際を行ったり来たりする様をハラハラドキドキしながら見守る映画にしたかったようです。
だったら、観客がもっとラッセルに感情移入できるようにストーリーを展開するべきで、そのためには、ラッセルに強い動機が不可欠です。
妻が無実であると確信していること。
子供がいじめられ日常生活が全く破綻してしまっていること。
警察が無能で初動捜査に問題があったこと。
などをきちんと描いて欲しかった。

いずれにしても、この作品では複数の殺人が語られますが、どれも犯人が捕まらないという、クライムサスペンスとしては何とも後味の悪い仕上がりとなっています。

私は、いただけませんでした。

2014.6.4

うそつきカモメ