劇場公開日 2011年12月17日

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CUT : インタビュー

2011年12月12日更新
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アミール・ナデリ 狂おしいほどの映画愛を自身初の日本映画に投影

「日本で映画を作りたかった」。長年そう公言してきたイラン出身のアミール・ナデリ監督が、西島秀俊を主演に迎え、すべての撮影を日本で行った最新作「CUT」。オーソン・ウェルズ、フェデリコ・フェリーニ、黒澤明……古今東西の巨匠が残した作品への愛と、マネーパワーに支配される現在の映画業界への怒りを、主人公の身体的な痛みとともに力強くスクリーンにぶつける。理想とする映画製作のために母国と闘い亡命した、ナデリ監督自身の姿を投影したかのような作品だ。このほど来日したナデリ監督が、あふれる思いを語った。(取材・文・写真:編集部)

「映画は真に娯楽であり、芸術である!」と拡声器片手に叫び、古いマンションの屋上で名画の自主上映会を開く、西島演じる若き映画監督の秀二。兄の残した借金を返済するために、“殴られ屋”となり、ヤクザから殴られるたびに愛する映画への思いを強くする……。当初は、ジョン・カサベテスの半生を映画化する構想があったが、2005年の東京フィルメックスで「会った瞬間からすぐに通じ合うようなものがあった」という西島との運命的な出会いにより、本作の梗概が固まっていった。

「西島さんとの出会いから、いろんな扉が開いていったのです。音楽が変調するように作品も変調していきました。私は20年来、世界各地で日本映画を見て、日本映画について講義をしてきました。巨匠とたちの作品が埋もれてしまっている現代において、日本を舞台にするのであるのなら、主人公の若い監督が日本のかつての名作を救いたいと思っている、その声がひいては世界のシネマも救う話というところにまで広がったのです」。

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数々の日本映画から大きな影響を受け、念願の本作製作にあたっては「真の日本映画を作りたい」と考えた。「その国の人のようにその国の映画を作る。彼らの文化、テーマを掘り下げて作るということが自分にとっての挑戦になっています。これまで日本の映画として外国人監督が撮った作品は、決して日本映画になりきれておらず、見ていて歯がゆい思いをしていました。自分が作るならば、AからZまで日本映画と言えるものをつくりたかったのです」。

一般的な日本人の傾向を「アメリカでは自分を犠牲にして何かをする場合、それは野心が原動力になっているケースが多いのですが、日本の多くの方は、自分の信じる物のために自分を犠牲にすると思います」と分析し、物語の舞台となるヤクザがたむろする怪しげなバラックのジムについて説明する。「黒澤監督の『天国と地獄』では、一室で物語が語られて最後に外に出ていきます。その一室の中に日本人的資質のすべてが見られるように感じました。また、小津安二郎の作品のように言葉が少ない方が多くを語れるということもあるので、よりミニマルな空間で、より多くのものを語りたいと思ったのです。そこでジムという場所に自分が思う日本人的資質、キャラクター、人間関係を入れ込みました」。

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インタビュー2 ~アミール・ナデリ 狂おしいほどの映画愛を自身初の日本映画に投影(2/2)
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