劇場公開日 2011年1月22日

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「ダメレストランが起死回生する件は、奇想天外。但し後半が少々ベタで残念でした。」ソウル・キッチン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ダメレストランが起死回生する件は、奇想天外。但し後半が少々ベタで残念でした。

2011年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 当初韓国映画と思っていたら、何とドイツ映画でありました(^_^;)
 移民の多いドイツで、そうした移民が気軽に集まる、心の拠り所としている大衆食堂が舞台。『ソウル・キッチン』という店名は、ごちゃ混ぜな音楽が響き、自分にとってのソウルフードを味わう人々が集う店をイメージしたものでした。
 但し料理のレベルはヒドイの一語。素手で揚げ上がったフライを盛りつけるは、盛りつけからはみ出したポテトサラダは、これも素手でこそぎ落とすは衛生観念はなし。早い・安い・味はそこそこがモットーの店でした。そんな店だから、儲かっていなく、税務署の取り立てで経営は風前の灯火となっていたのです。
 そんな絶体絶命の苦境を、中盤思いもよらぬ方法で挽回していくところが、傑作でした。但し後半ナディーンを追い掛けて上海へ向かおうとするところから、少々演出が雑になり、話がベタになっていくのは残念なところです。
 それでも、世界三大映画祭を36歳にして制覇したアキン監督だけに、話をグイグイと引っ張ってくスピード感や意外な展開は、なかなかのもの。こりまで移民をテーマにシリアスな作品を手掛けてきて、喜劇には躊躇していたといいながらも、なかなか楽しめるコメディを作ってくれました。

 今回のポイントとなるのは食と音楽ですが、移民たちの魂に触れる料理という点では、インパクトがないと思います。劇中天才シェフのシェインが作る料理は、メキシコ系の料理人の指導で作られて、ビジュアル的にも見事なものですが、それが各国の移民たちのお袋の味とは結びつきが弱いのではないでしょうか。
 映画『カモメ食堂』では、たとえフィンランドのヘルシンキで食堂を開いても、主人公は日本の味で堂々勝負していました。本作もトルコ移民二世である監督であればこそ、自身の思うソウルフードをもっと打ち出すべきだろうと思います。

 ところで主人公のジノスの兄イリアスが、DJを盗み出して、店がまるでライブハウスのように一変する当たりから、映画のメインが食から音楽へ変わっていきます。、ルイ・アームストロングやクインシー・ジョーンズ、カーティス・メイフィールドといった大御所から近年のドイツ・ダブなど様々な音楽が流れていて、ヨーロピアン・ポップスのお好きな方であれば、聞かせきどころとなるシーンもたくさんあることでしょう。

 後半の不満なところは、ジノスが店の経営を兄に任せてまで上海へ向かおうとするところです。どう見ても恋人のナディーンは上海で男を作って、ジノスを避けているのがバレバレなのに、それでも上海に行こうとするところと、その後兄のイリアスが博打で一気に店を手放すところは、展開の強引さが気になりました。

 ところで、ジノスの店を博打の代償として強奪してしまうノイマンでしたが、ラストで天罰が下ります。なかなか痛快なオチで笑えました。まぁ、税務署のナサケの女とはあまり親密にならないほうが、身のためですねぇ(^_^;)

流山の小地蔵