劇場公開日 2009年5月1日

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チェイサー(2008) : インタビュー

2009年4月27日更新

韓国では500万人を動員する大ヒットを記録し、作品、監督、主演男優賞など大鐘賞6冠に輝いた傑作犯罪スリラー「チェイサー」。実際に起こった事件をベースに猟奇殺人犯と元刑事の息詰まる追跡劇を描いた本作について、来日したナ・ホンジン監督に話を聞いた。(取材・文:くれい響)

ナ・ホンジン監督インタビュー
「表現とストーリー面では、どこかで自信があったといえますね」

全編息詰まる緊張シーンの連続。ソウル市街を駆けめぐる大追跡のあとには衝撃のラストが待ち受ける!
全編息詰まる緊張シーンの連続。ソウル市街を駆けめぐる大追跡のあとには衝撃のラストが待ち受ける!

──製作段階から、ここまで評価される作品になると思っていましたか?

長編第1作ながら各方面から絶賛された ナ・ホンジン監督
長編第1作ながら各方面から絶賛された ナ・ホンジン監督

「そんなことは、まったくなかったですよ。自分たちが映画を撮っていることを誰も知らず、映画雑誌での記事すら見たこともない。そのうち、製作資金も底を突き始めていったし、まるで自分が“シルミド”に来ているような気分に追い込まれていきました(笑)。でも、表現とストーリー面では、どこかで自信があったといえますね」

──それは具体的に、どういうことでしょうか?

「表現的な面では、手刺繍のような感覚。機械で作ったものでないから、デザインがちょっと歪んだり、糸に手垢が付いたり、決して美しく整ったものではないかもしれない。でも、そこには人間の痕跡が残っている。ストーリー面では、人間そのものについての話を描くこと。人間は自らの本性を隠して、日常生活を送っており、悪の部分はないと信じている。そういう部分も徹底的に描いたからこそ、男女関係なく、多くの観客が共感できたんだと思う」

──劇中、「ダーティハリー」を意識させるシーンもありましたが、ホンジン監督はどのような監督たちに影響されたのでしょうか?

「確かに、ハリーのキャラクターの強さが好きなので、少なからず影響を受けているとは思いますね。ジャンル的にはスリラーが好きで、クエンティン・タランティーノ、ウィリアム・フリードキン、サム・ペキンパー、セルジオ・レオーネなど、自分に刺激を与えてくれた監督はたくさんいます。私自身、映画学校に行ったわけでもないので、シナリオの書き方や映画の撮り方は、彼らの映画を何度も観ることで学んでいったんです」

レオナルド・ディカプリオ製作による ハリウッドリメイクはいかに?
レオナルド・ディカプリオ製作による ハリウッドリメイクはいかに?

──さて、日本ではR-15指定ですが、韓国ではさらに厳しいR-18指定だったということは、リスクになりませんでしたか?

「その対象になったのは、もちろんバイオレンス描写です。とはいえ、それら3シーンはこの作品に必要不可欠なものだったんです。だからこそ、商業的なリスクを背負ってでも、カットすることを譲れなかった。プロデューサーからしてみれば、主人公のジュンホが最初、悪人のようにみえること。そして、彼が追い続ける殺人鬼・ヨンミンに、これといった動機がみられないことも、ひっかかっていたようですね」

──衝撃のラストシーンに関しては、いかがだったんでしょうか?

「もちろん、契約段階から“絶対に口を出させない!”ということを同意の上で話を進めましたよ(笑)。今回、嬉しいことにハリウッドでのリメイクが決まりましたが、さすがに変更されてしまうでしょうね。あくまでも自分が撮りたいと思っていた『チェイサー』は、自分のやり方で撮りました。だから、それを原作にハリウッド流にリメイクしてもらえばいいんですよ」

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