劇場公開日 2009年12月23日

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アバター(2009) : インタビュー

2009年12月14日更新

前人未到の大ヒット記録を樹立し、アカデミー賞を総なめにした、文字通り歴史に残る大作「タイタニック」から12年、ついに“巨人”ジェームズ・キャメロンが動いた――。この映画のために自ら開発した最新デジタル3D技術やモーション・キャプチャー技術を惜しみなく投入し、構想から14年、実製作に4年をかけて完成させた「アバター」がいよいよ全貌を明かす。日本公開の直前となる12月21日に、12年ぶりの来日を果たしたキャメロン監督を直撃した。(取材・文:編集部)

ジェームズ・キャメロン監督 インタビュー
「3作目までのアウトラインは考えている。ヒットしたら続編は絶対に作るよ」

親日家としても知られるキャメロン監督が日本公開直前に自らプロモーションで来日
親日家としても知られるキャメロン監督が日本公開直前に自らプロモーションで来日

――観客は「タイタニック」から12年間待ち続けたわけですが、自身が描きたいものに技術が追いつくまで作らないという、その妥協しない信念や情熱は、どこからくるのでしょうか?

ナヴィ族の青い肌にはさまざまな理由が
ナヴィ族の青い肌にはさまざまな理由が

「私はいつも複数のプロジェクトを抱えている。でも、それらを映画化するかどうかは、すべてタイミングなんだ。タイミングを見ながら企画を選んでる。それに、2000年から5~6年間は深海に潜るドキュメンタリーばかりに時間を費やしていたんだ。同時に3Dカメラの開発はしていたがね。そして、その期間を経て、いよいよ長編の劇場映画を作ろうということになった時、機が熟していた。それが『アバター』なんだ。確かに5年前にはこの技術はなかった。いまはその技術ができたし、タイミングもいいので取り掛かったというだけのことなんだよ」

――ナヴィ族の肌の美しさが印象的ですが、青という色には何か特別な思いや意味はあるのでしょうか?

「青は好きな色だし美しいし、このキャラクターにあっていると思ったんだ。それから、実はいまから20数年前に、母が3メートルくらいの大きな女性が出てくる夢を見たという話をしてくれたことがあって、僕がそれを絵に描いたことがあった。その時のことを覚えていて、今回のナヴィをデザインする時に使ったということもある。さらにもうひとつ、“アバター”はヒンズー語の“アバタール”という神の名前が語源で、その神様が時々人間のかたちをとる時、必ず青い色をしているんだ。それもあるね」

――出演者から“ディテールの天才”と言われているそうですが、それだけ細部にこだわる中で、特にここはというところはありますか?

シガニー・ウィーバー(右)と撮影現場での監督
シガニー・ウィーバー(右)と撮影現場での監督

「俳優に演技をさせるには、具体的な世界を考えておいてあげなければいけない。抽象的な状況では演技ができないんだ。たとえば水を飲むということにしても、何で飲むのかというのは、彼らにとっては重要だ。コップで飲むのかとかね。でも、パンドラにはコップはないから、花弁で飲むんだと伝えるわけだ。だから全てのことを計算し、ディテールを作りこみ、準備しなければならない。この映画には、そういうこだわりが1万か10万くらいはあるよ(笑)」

――地球人がパンドラを侵略する様子は、まるで現実の戦争のようですね。

「人類の歴史は侵略の歴史でもある。植民地時代には欧州の列強がアメリカ大陸やアフリカ大陸を侵略し、自分たちが欲しいものを現地人から勝手に奪い取っていった。では、その侵略される側はどういう気持ちになるのかということを、この映画は描いている。被害を受ける側からね。多勢に無勢で襲われた時、どんな気持ちがするか。映画の中で無数の軍用ヘリコプターが襲ってくる場面がある。私もたまにヘリを見ると、もしあれが襲ってきらどうしようと恐ろしく思うことがある。そういうことを見る人に自問させたいんだ。いまの地球を見て、政治家たちがしていることを見て、目を開きなさいと言いたい。軍隊というのは建前としては正義のためにあって、私も別に軍隊を否定はしていない。守るための力は必要だ。でも、それが間違った使われ方をしてはいけないということを伝えたかったんだ」

パンドラの世界はまだまだ広がりそうだ
パンドラの世界はまだまだ広がりそうだ

――プロデューサーのジョン・ランドー氏が、監督は14年前に語りたかったストーリーからぶれていないと発言していましたが、監督の思う良いストーリーとはどんなものですか?

「まず観客がキャラクターに感情移入できるようでなければダメだと思う。そのために興味深い主人公を作り、その人物を新しい世界に放り込む。同時に脇役たちも魅力的にすれば、そこに人間関係が生まれる。そして障害があり、克服する。もちろん最後は大アクションで締める! これが成功する映画じゃないかなと思うよ(笑)」

――スティーブン・スピルバーグは「『スター・ウォーズ』以来、最も刺激的で驚くべきSF映画だ」と言っています。「スター・ウォーズ」のように続編映画や小説、アニメなど今後世界が広がっていく可能性は?

「もちろん小説やグラフィックノベルなどにはなるかもしれないし、ヒットすれば続編は絶対に作るよ。TVシリーズは予算の関係で無理だと思うけど(笑)、アニメということも考えている。いろいろなジャンルに波及していく可能性を秘めていると思うよ。映画についても、とてもラフなものだけど、3作目までのアウトラインは考えてある。でも、まずは少し休ませてもらって、これが成功してお金が入ってきたら取り掛かるよ(笑)」

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