劇場公開日 2019年9月6日

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「光と影の混ざった退廃的近未来都市」ブレードランナー ファイナル・カット Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5光と影の混ざった退廃的近未来都市

2013年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

難しい

総合:85点
ストーリー: 70
キャスト: 80
演出: 90
ビジュアル: 80
音楽: 75

 ファイナル・カット版というのを初めて見た。通常版を見たのがいつだったかも思い出せないし、その内容をよく覚えていないので違いもよくわからない。独特の堕落した未来世界で、頭のいかれたルドカー・ハウアーがわざわざ頭突きで壁に穴を開けて登場して科白を喋ったりして、当時はわけがわからない物語だと思ったように記憶している。

 さて舞台は2019年のロサンジェルス。その堕落した未来世界がやはり独特で面白い。よく聞いていると街中で時々日本語すら飛び交いや日本語の看板なんかも見られて、いろんな人種や文化が雑多に融合している。もっとも現代のロサンジェルスもいろんな国の言語が飛び交い英語以外の看板が普通にあちこちにあるので、その意味では似たりよったりかもしれない。
 しかし順調には進化しきれず環境汚染され、通りはごみやがらくたが散乱し、その中を貧民がネズミのごとく生きていて、警察は空を飛ぶ車の中から降りてこようともしない。そんな陰鬱な負の雰囲気が町中を覆っている。何もかもが洗練され高度に進化した未来都市ではなく、技術は進歩しつつも貧富の差が激しくスラムが拡大し無秩序に形成された街になっている。その世界観がこの映画最大の見せ場であろう。
 この雰囲気はその後のリドリー・スコット監督の映画「ブラック・レイン」の舞台の大阪にも生かされる。彼の描く大阪は2019年のロサンジェルスに進化する前の黎明期の未来都市である。彼にとって日本とはそのような退廃的都市に写っていたのだろうか。

 登場人物も何かと風変わり。レプリカントはともかくとして、他は同じ人間であるはずなのに何か理性がぶっとんだ風変わりで刹那的な雰囲気の人で世界が構成されている。普通に喋り行動する人がいなくて、いつも何かしらの緊張感が漂い、また音楽もそれを助長する。その世界観と映像美が今見直してみると新鮮で衝撃的で楽しめる。これはちょっと前衛的な芸術作品のようにすら思える。

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Cape God