劇場公開日 1948年6月1日

「【following様の鑑賞リストから選んで観てみた】 太平洋戦争...」我等の生涯の最良の年 雨丘もびりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【following様の鑑賞リストから選んで観てみた】 太平洋戦争...

2024年2月4日
PCから投稿

【following様の鑑賞リストから選んで観てみた】
太平洋戦争が終わった直後のアメリカ。
3人の帰還兵におきた、新聞には載らない悲喜劇。

ホーマーは元海兵。
搭乗艦の撃沈で両腕先を失うも、義手を器用に使いこなし「マッチの着火からビールの栓抜きまで余裕だぜ♪」とにっこり。
しかし、それは戦友との間でのみ、見せられる余裕。
両親やフィアンセから奇異に見られることを怖れるあまり、どう振る舞って良いか分からず萎縮してしまう。周りが気を遣えば使うほど「憐れみはごめんだ」と距離を置いてしまう負のスパイラル。普通がわからず戸惑う双方がつらい。

アルは元歩兵軍曹。
帰還を妻や娘・息子に歓迎されるが、成長した長男からヒロシマに対するリベラルな見解をブツけられ、面食らう。
復職した銀行では副頭取に執り立てられるが、同じ境遇である復員兵への融資を"拒む"立場に着いたことに悩み、後ろめたさを抱くようになる。

フレッドは元空軍大尉。
従軍中は切れ者として名を挙げたが、爆弾落としのスキルを活かせる仕事などあるはずもなく職にあぶれ、かつてのバイト先で、かつての後輩の配下で働くハメに。プライドを殺し傷だらけで働くも、見栄っ張りで夜遊び好きな妻からロコツに見下され、虚無感を深める。
また、戦中の体験から悪夢に苛まれるも、その苦しみを打ち明けられず苦しむ。

遠征先の"非日常"に慣れ、心安らぐはずの故郷"日常"とのズレに戸惑い、悩み、蝕まれてゆく3人が、互いに励まし合い、周囲の人たちと馴染もうと足掻き、本作のタイトルが表す心情にまで到達するドラマは深い感動を呼ぶ。間違いなく。
しかし、見終えた後にホッとした溜め息が出ず、言葉に詰まるのは、幸福な物語の外側に流れる悲惨な物語たちを想像させられるから。
本土を丸焼けにされた当時の日本の方々にとっては、復員兵と故郷の家族との心的距離は、さらに埋めがたいほど離れていた。
それに、『ジョニーは戦場へ行った』のような境遇の人もいたはずで、もう私はほんとにああいうの、考え出すとダメです。

うぅ。

技術的な話に無理矢理引き離すと、印象的なシーンがたくさんあり深く没入できた。
寄ってもウエストショットまでの、一歩引いた画。
それでも、ホーマーの実家のシーンはどれも息をつめて見てしまう緊迫感だし、
ある問題を巡りフレッドとアルが一歩も引かず火花を散らす場面を、シンメトリーな画で見せきる技はシンプルながら効果的。

ホーマーが叔父ブッチとピアノを連弾するところは涙が出た。習得までに掛かった時間、居場所を作ってくれた叔父への感謝、大好きな人たちの前で打ち明けられない本心が、楽し気な音になって流れ出る。
そうそう、BGMによる心情表現も見事。悲しみから歓びから怒りから切なさへ、一連の音楽が導いてくれるので驚いた。ほんとスゴい。

半面、アルとフレッドが各自の問題にブチあたるまでが、冗長に感じた。
登場した時から問題を提示している傷痍軍人ホーマーと比較して、ですけど。
あと、彼らを取り巻く女性たちが演技過剰に感じられ、それが魅力的に映える時もあれば、オーバーに思えて冷める時もあった。こういう映画見慣れてないので、当時のスタンダードな演技がわかんなくって。
なので、私の所感としてマイナス☆1。

約3時間、ちょっと1日では見切れなかったので何日かに分けたけど、
それでも私なんかでは手に負えない、どう言っていいか分からない映画。
観て良かったことは確か。他に得難い映画体験。
そのうえで、何回も見直すのはキツいから、どこかで本作を鑑賞された方々に出会ったら、言葉を交わして理解を深めていきたい。
そのためにも、忘れない一本。
とりあえず「観ました」記録と、言葉をため込んでおくと寝られないので(^^;)、乱文投稿まで。失礼致しました。

雨丘もびり