劇場公開日 1959年11月1日

「美しい歌とともに色彩を楽しんでください」南太平洋 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0美しい歌とともに色彩を楽しんでください

2019年6月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

不覚にもハッピーエンドに涙しました
美しい映像、美しい風景、美しい物語、美しい歌
何もかも最高です

舞台は赤道の少し南、パプアニューギニアの東方ソロモン諸島
まだ日本軍が優勢な頃の最前線の島
日米両軍の勢力が均衡して不思議な平和な日々の中での二組のラブロマンスの物語
そして終盤はなんとその日米の均衡を破る活躍が描かれます
それによって日本軍は総崩れとなり、米軍の本格的な反攻が始まるのです
もちろんガダルカナルの戦いのことを描いているのだと思います
この戦いこそ太平洋戦争の攻守が逆転した本当の天王山でした

つまり本作は南の島のラブロマンスのミュージカル映画だとばかり思っていたら、なんと本格的な戦争映画でもあったのです

そうした強いストーリーを下地にしているからこそ、その上に展開されるラブロマンスも力強く胸を打つのだと思います

圧倒的な色彩、歌のシーンの前になるとカラーフィルターがかかり青だの黄色だのの色彩に染まります
確かに不自然でそのままの美しい自然をバックにして歌のシーンで良かったのではと思います
しかし、その色彩の変化!
超有名な名曲バリハイのシーンの燃えるような赤い色彩と歌が終わって現れる青い海と空、そしてやがて赤く燃える夕焼けの対比!
またこれも有名なハッピートークでは手指の可愛い仕草だけでなく、黄色いフィルターの映像と水中の目の覚めるような深い青のコントラスト!
まるでトロピカルカクテルに酔ってくらくらするかのようです
歌のシーンだって劇のなかで突然はいるのは、ミュージカルに慣れない人なら不自然に感じるものです
ならばカラーフィルターが感情の演出として歌のシーンと共に入っても同じはず
本作のそれが流儀なんだと心得て見れば楽しめるものになります
ぜひポジティブに捉えて色彩を楽しんで頂きたいと思います

フランス人のロマンスグレーの素敵なおじさま役のロッサノ・ブラッツィは実はイタリア人
デヴィッド・リーン監督の旅情でもレディキラーでした

本当の恋愛はどんな障壁も乗り越えてしまうはず
命がかかったときそれを理解できるという物語でした
もう一つの悲恋で終わるラブロマンスの結末を知ってヒロインは自らの中の障壁を克服できたのでした

余韻も素晴らしく美しく、胸に残りました
暑い夏の夜に是非ご覧ください

あき240