劇場公開日 1994年3月19日

「【”夕暮れが、一日で一番良い時間・・。”第一次世界大戦後、親ナチ思想の主の元、只管に執事の品格を保った男をアンソニー・ホプキンスが抑制した演技で魅せる作品。】」日の名残り NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”夕暮れが、一日で一番良い時間・・。”第一次世界大戦後、親ナチ思想の主の元、只管に執事の品格を保った男をアンソニー・ホプキンスが抑制した演技で魅せる作品。】

2022年7月11日
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鑑賞方法:VOD

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■第一次世界大戦後、親ナチ思想に傾倒する主であり、英国貴族でもあるダーリントン卿が暮らす、ダーリントン・ホールを仕切るスティーブンス(アンソニー・ホプキンス)。
 夜な夜な、英国貴族たちが集まり、世界情勢について語り合う中、彼はその言葉を聞きつつ、自らの意見を言う事はない。
 又、自分の父が執事として働き始めるも、歳の為か転んでしまう姿を見たスティーブンスは、父を給仕から外し、掃除係を命じる。
 そんな中、メイドのミス・ケントン(エマ・トンプソン)だけが、彼に意見を言う。
 それは、彼の執事の仕事に身を捧げて来た人生に、ささやかな波紋を齎す。-

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・前年に公開された「ハワーズ・エンド」も同様なのだが、作品を覆う気品高き雰囲気が、とても良い。それは、細部に亘る時代考証を吟味し尽くした、衣装、意匠を始めとした美術陣の拘りからであろう。

・今作は、第一次世界大戦後に英国貴族たちが夜な夜な、ダーリントン・ホールに集い、今後の世界情勢を語る時代をメインに、その20年後を並行して描いている。
ー どちらのシーンも、アンソニー・ホプキンス演じるスティーブンスと、エマ・トンプソン演じるミス・ケントン(20年後はミセス・ベン)の関係性がメインで描かれる。-

・アンソニー・ホプキンスの恋もせず、主の言いつけには忠実に従う執事スティーブンスの姿を、徹底的に抑制した演技で魅せる役者としての力量が、凄い。
 そして、そんな中、彼はミス・ケントンだけには、人間らしさを仄かに見せる。
 例えば、親ナチ思想に傾倒する主から、ユダヤ人の娘二人の解雇を告げられるも、それに従った事に、ミス・ケントンから抗議される彼の表情。
ー どう見ても、スティーブンスはミス・ケントンに恋をしている。彼が、密かに恋愛小説を胸に抱くシーン。それでも、彼はミス・ケントンに告白をせずに、涙する彼女に対し、静に明日の仕事の指示を出す。-

<ダーリントン卿たちの会話を聞き、”アマチュアだ!”と言いきったアメリカ人のルイス議員が、第二次世界大戦後、新たなダーリントン・ホールの主になり、許しを得て、一人旅行に出かけたスティーブンスは、多分初めて外界に出て町の人達と交流し、優しさに触れ、そして、20年振りに今や、ミセス・ベンになったミス・ケントンと会う。
 そして、彼女から色々とあったけれど、
 ”夕暮れが、一日で一番良い時間・・。”
 と言われ、清々しい顔で”もう会うことはないだろうけれど・・。”と言って別れる。
 今作は、執事の品格を保ちつつ、人生を過ごした一人の男をアンソニー・ホプキンスが、抑制した演技で魅せた作品であると思う。勿論、エマ・トンプソンも素晴らしい。>

NOBU
琥珀糖さんのコメント
2022年7月15日

こんにちは。
はじめまして、琥珀糖です。よろしくお願いします。

「パワーズエンド」も「日の名残り」も、ちょっと古いイギリス映画は、
とても好きです。
品位と格調と様式美。
執事・・・?
アンソニー・ホプキンスさんの演技。
自分を律する心の内、素敵でしたね。

琥珀糖