劇場公開日 2016年4月16日

「【作品自体の度外れた異様な世界観と、公開直後酷評されながらも今や20世紀を代表する映画になっている事実とともに、今作制作時のフランシス・コッポラが40歳だった事にも戦慄する作品。】」地獄の黙示録 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0【作品自体の度外れた異様な世界観と、公開直後酷評されながらも今や20世紀を代表する映画になっている事実とともに、今作制作時のフランシス・コッポラが40歳だった事にも戦慄する作品。】

2020年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

 映画を愛する者であれば、今作を誰もが数度は鑑賞している前提でレビューする。

 原題:"APOCALYPSE NOW"
敢えて訳せば、”隠された真理の開示は、今”といったところだろうか?

 505大隊、173空挺所属、特殊工作員ウィラード大尉(マーチン・シーン)はサイゴンの気怠い暑さの中、ホテルで白いシーツの上で空虚な眼をして寝転がっている。傍らには飲みかけの”マーテル”の壜。

 そんな彼に、任務が告げられる。
 それは、第5特殊部隊の作戦将校であり、祖父・父ともにウエストポイント士官学校を卒業し、”その男”も同校を首席で卒業し、朝鮮戦争時の戦歴を含め、軍部の最高幹部となるべき人物、ウォルター・E・カーツ(マーロン・ブランド)の殺害である・・。

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 今作上映までの過程も人口に膾炙していると思われるが、一応記載する。

 1976年3月20日から製作が始まった今作は、1200万ドルの予算で120日で終わるはずだったが、結果としては、540日の撮影期間、3100万ドルをかけて完成した。
 コッポラは、”ゴッドファーザー”で得た利益を全て次ぎ込み、更に全財産を”抵当に入れ”それでも足らない制作資金を世界中に協力を仰ぎながら、作り上げた。
 重ねて言うが、この所業を彼は40歳で行ったのである。信じ難い・・。
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 オープニングの気怠いホテルの風景から、一気に場面はキルゴア中佐(ロバート・デュバル)率いる空軍騎兵隊第一中隊駐屯地に移る。

 キルゴア中佐は(この時点で、この映画の狂気性の片鱗が伺えるのだが・・)、ウィラード大尉が連れてきたランス・ジョンソン(サーフィンの名手らしい:サム・ボトムス)に気付き、”ランス・ジョンソンか!、ランスにサーフィンをさせよ!”と銃弾が飛び交う中、上着を脱ぎ棄て叫ぶ。

 そして、ベトコンが潜む村に数千発のナパーム弾を撃ち込む。後方援護はファントム・ジェット機。
 炎を上げるベチナムの村の地獄絵図。
 そして大音量で響き渡るワーグナーの”ワルキューレの騎行”

 静かなオープニングからの、この強烈な場面は何度観ても米軍のそして、この映画が孕む狂気に息を飲む。(ちなみに、このシーンはCGではない・・。)

 その後、ウィラード大尉は部下を引き連れ川を遡上していくが、途中で遭遇する”ラスベガス:ヘリコプターから降りて来るバニー・ガールたち”(目がクラクラする・・。何を観させられているのか、自問自答する力も無くなっている。。)
 及び、怪しきヒッピー風体の、カーツを信奉するカメラマン(デニス・ホッパー)。

 そして、生首があらゆるところに曝されたカーツ王国に到着するウィラード大尉。
 ”神”と呼ばれるカーツ大尉との対面。

 ー 学生時代、名画座で観て以来、この映画を何度観た事か。ー

 流れる”THE DOORS"の”THE END"の今作との見事なシンクロニシティ・・。

 最後に、この映画に対する故黒沢明監督のコメントを記す。

<この映画は難解ではない。
 これまでの映画の表現を数歩踏み越えた、勇猛でエネルギッシュな表現が掴んで見せた面白さがある。・・・・。
 恐怖は人間を支配し、異常な状態に追い込む。
 戦場で人間が異常に勇敢になるものも、残虐になるのも、また奇妙な事に熱中するのも、全て恐怖から逃避するためだ。
 恐怖から逃れるためには、人間は何を考え何をするかわからない。
 戦場は地獄だから怖いのではない。
 戦場では、時に地獄は天国に見えるから怖いのだ。
 そういう人間というものが怖いのだ。>

<1987年 劇場にて鑑賞 その後、幾度となく鑑賞>

NOBU
Mさんのコメント
2023年6月11日

「・・・40歳で行ったのである。信じ難い・・・」というのは40歳という「若さ」で全てをつぎ込んだという意味ですか。それとも周りからも信頼され、ある意味「既に、功なり名を遂げた状態なのに」という意味ですか。

M
ワンコさんのコメント
2020年2月29日

こんにちは、
これ、明日IMAXで観る予定なんですけど、品川のでーっかい映画館で、でも、コロナ怖いから、端っこの席予約しました。

ワンコ
2020年2月19日

NOBUさん🙇御無沙汰で御座います✴

黒澤監督のコメント、全文記して頂いてありがとうございます🙇

本作のレビューを挑むきっかけは、私もパンフレットの監督のコメントに脳が痺れ、観た当時へタイムスリップした気分になった為です…本作の合間にかかる、霧がかかった様な不穏なサウンドと共に蘇る記憶…🎵

28日から「ファイナル・カット」が公開ですね✴

NIRVANA