黒い罠

劇場公開日:

解説

「マクベス(1948)」以来のオーソン・ウェルズ監督作品の登場である。探偵作家ホイット・マスターソンの「悪の記章」を原作とする、メリカ=メキシコ国境の町に起こった爆殺事件にからまる、両国の捜査刑事の対立と不気味な警察内部の腐敗が、国境町の風土感を生かして描かれる。撮影監督は「千の顔を持つ男」のラッセル・メティ。音楽は「世界を駈ける恋」のジョセフ・ガーシェンソン。主演は「悪魔に支払え!」に次ぐウェルズ自身に「十戒(1957)」のチャールトン・へストンと「ジェット・パイロット」のジャネット・リー。その他「追想」のエイキム・タミロフやジョセフ・カレイアなどの性格演技者が選ばれている。特別主演として「情婦」のマレーネ・ディートリッヒ、「赤い風車」のザザ・ガボールが登場。製作は「翼に賭ける命」のアルバート・ザグスミス。

1958年製作/アメリカ
原題:Touch of Evil
配給:ユニヴァーサル
劇場公開日:1958年7月5日

ストーリー

新妻スーザン(ジャネット・リー)と新婚旅行へ出発のため、国境の町にやってきたメキシコ政府特別犯罪調査官マイク・ヴァルガス(チャールトン・ヘストン)は、アメリカ領へ入った時、2人を追い抜いた豪華な乗用車が突如爆発したのを目撃した。ヴァルガスは職業がら、妻をホテルに帰して、休暇中にもかかわらず調査をはじめた。間もなくアメリカ側の警官がやってきた。捜査担当のハンク・ウィンラン警部(O・ウェルズ)は、足が不自由で、獰猛な性格の巨躯の持ち主で、自分の担当した事件でかならず犯人を挙げる男として知られていた。爆発した車中の2死体は、若いストリップ・ガールと町の富豪リネットカーのものと判明した。クィンラン警部はヴァルガスの介入を嫌ったが、上司の命令で協力を余儀なくされた。スーザンは現場からホテルに帰る途中見知らぬメキシコ人に情報提供をタネに誘われ、安ホテルでメキシコとアメリカをまたにかける暗黒街の顔役アンクル・ジョー・グランディ(エイキム・タミロフ)から、麻薬密売容疑で捕われている彼の兄の調査から夫の手を引かせるよう脅迫された。妻をアメリカ側ホテルに移したヴァルガスは、クィンランと共にリネカーの娘マーシァ(J・ムーア)と、若い夫サンチェスを尋問した。しかしアパートの洗面所の靴箱からクィンランが爆発の時のものと同型のダイナマイト発見した時、ヴァルガスは疑問を生じた。彼が先刻洗面所に入った時、箱は空だったのだ。念のためクィンランの扱った事件の記録を調べた彼は、このアメリカ警察の英雄の数々の功績が、無実の罪を強引に作り上げる虚偽の工作から成立しているのを発見した。弱味を探られたのを知ったクィンランは顔役グランディと図ってスーザンを誘拐し、麻薬窟に彼女を半裸にして失神させておき、彼女のストッキングでグランディを絞殺し、死体を傍らに放置した。スーザンは逮捕された。この時、クィンランの部下メンジスが、グランディの死体の近くで、クィンランの常用する杖を発見し、ヴァルガスに協力を誓った。マイクロフォンを服の下に隠したメンジスは、クィンランを誘い出して無実の罪を作った事実を聞き出し、ヴァルガスが形態無電録音器にこれを録音した。しかしコンクリートの橋に2人がさしかかった時、反響から、クィンランは事情を察知した。怒ってメンジスを射ったクィンランは、素手のヴァルガスに1弾をうち込もうとした時、瀕死のメンジスがはなった弾をうけて射殺された

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0天才の映画

2021年9月18日
スマートフォンから投稿

稀代のウェルズ君、閃き全開です。
第三の男みたような、市民ケーンみたような凝ったアングル、陰影、移動など撮影技法の卸問屋です。
更にその映像をスピーディ且つトリッキーにたたみかける編集も見事。
プロットもよく練られているし、ウエルズ君の怪演は相変わらずだし、監督目指す人の教科書になりそうです。
カルト作品らしく、Wikipediaの解説が異常に長いですが、カルトではなく斬新でスタイリッシュな作品と思います。

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越後屋

4.0マレーネ・ディートリッヒ

2020年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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kossy

4.0Orson Welles

2019年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

興奮

オーソン・ウェルズという映画業界でもNo.1の座を争う偉人の作品。
まず、このような伝説的作品を定額制動画配信サービスで見られることを感謝せずにはいられない。
1950年代のフィルムノワールという一時代を作ったジャンルの代表的な作品。一番最初に目に貼ってくるのはやはり、フィルムノワールの代名詞とも言える照明。何を映すのかではなく、何を闇に隠すのかという影が支配する映像は見応え十分です。そして、フレーミングの王様、オーソンウェルズの一寸違わぬカメラワーク。そして有名な編集。

シネマトグラフィー(撮影、照明)
ハードライトでくっきりとキャストされる影がやはりこの時代の副産物でしょう。超巨大なライトを使って、サイドから力強く当てられた光が作る影は、フィルムノワールの主役です。今作でもそうですが、フィルムノワールのテーマは裏切りや陰謀などの人間の影の部分をテーマとします。文字通り、人間の裏の部分が影となって一つのキャラクターとして映し出されます。さらには、陰もくっきりと漆黒で顔の半分を支配する、キャラクターのクローズアップは、その人間の表と裏の二面性を描いています。
シルエットや陰影のように照明が当たらないところでキャラクターを表現する。それがフィルムノワールです。ハリウッドスタジオの黄金期を支えた一つのブランド。

オーソンウェルズ
『市民ケーン』でもよく知られますが、レンズの長さやカメラのアングルなどのフレーミングのテクニックを使ってキャラクターの感情や立場を表現する技術の親がオーソンウェルズです。今作では、オープニングシークエンスやサンチェスの家のシーンで見られるワナー(長回し)がとても実物です。危険とオーディエンスとの距離を操作し、キャラクターをステージ上でダンスをするように動かし、サブコンシャス的にそのシーンを盛り上げ飾りつけしていくこのフレーミングとブロッキングは、現代の映画にも通じる先駆者の代物です。

編集
これまたスタジオ時代の映画界を象徴するような事件で有名ですね。撮影後、オーソンウェルズがチームから抜けた後、ユニバーサルスタジオがストーリーを書き換え、別シーンを撮影し、変種を操作しました。それにオーソンウェルズが68ページにもわたる抗議を含んだ意見文を提出したのです。しかし、それも叶わず、そのまま放映されてしまいました。
その後、その意見文を元に、ウォルターマーチ先生が再編集をしたのは、公開から40年後のこと。そこで、彼の作品はさらに脚光を浴びることになりました。映画界での伝説の地位を確立したのは、そのとき。

これらからもよくわかりますが、一つの作品に対する熱意が違う。自分が出演するのもそうですが、68ページにもわたって自分の意見を書くことができるのは、そこまで作品に対する愛があり、熱意があり、それが叶わなかったことがどれほど失意だったのかが伺えます。
これが映画だと言わんばかりの作品です。単純に初見でも面白く、ハラハラできるフィルムノワールですが、100回観ても味がする、芸術であり、映画のポテンシャルをさらに感じる最高傑作。
それゆえ、私はこの作品の1%も感じ取れていないし、楽しめていない。99%楽しむ余地が残っていることだけはひしひしと感じる。

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vary1484

4.0理解されなかったウェルズの「作家性」

2019年1月6日
Androidアプリから投稿

冒頭の長廻しは「空間の振付」と評され、素晴らしい効果をあげている
全般的に 視覚的に優れた映画である
疾走感もあり、ウェルズの才気を 感じさせる
今より 単純であった観客の為に、映画会社に勝手に再編集されてしまったのは、気の毒であった
ストーリー展開に やや、難はあるが(観客にわかり辛い) 作家性を重視できなかった時代である
(修復版を 見てみたい)

老いた巨漢刑事(ウェルズ)が 組織の歯車となって働いているうちに、犯罪者側と なあなあになって、
崩壊していく様子が 哀しくもある
(体を酷使しても、妻を失っても 犯罪は減らない)
彼を追い詰める捜査官ヴァルガス(ヘストン)の若さと 正義感と 贅肉の無さ!

ストリップクラブのオーナーに、ザ・ザ・ガボール
(9回結婚した美人女優)
酒場女ターニャに デートリッヒが 扮して華を添えている
デートリッヒは この映画のラストシーンの自分を高評価してるが、彼女はメキシコ女の雰囲気ではない様に感じる
やっぱり、ヨーロッパの退廃だよね
(本人は 飽きたかも知れないが… )

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jarinkochie
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