劇場公開日 2019年9月27日

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「開かれる男の世界」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト Kjさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0開かれる男の世界

2022年4月10日
iPhoneアプリから投稿

顔にたかるハエ、頭上から落ちる水滴、指をパキポキ。のっけから観る者に覚悟を植え付ける。時間がかかるがその世界観に堕ちていく。ハーモニカの音色で現れる男。勝負は刹那で決まり、風車の音がカラカラ。本人も無傷で終わらないのも良い。
チャールズブロンソンの細い目は寡黙であるが、哀愁に満ちている。立ち姿が美しい。端正とは言えないが吸い込まれるような魅惑を放つ。そんな細い目に寄るドアップ。彼が見てた忘れられぬ記憶から銃を抜く。
対するヘンリーフォンダの描き方も一筋縄にいかない。冒頭の所業からして極悪ではあるが、享楽的ではなく、執行者として請け負わされたようでもある。未亡人にむしゃぶりつく濡れ場は妙に生々しく人間性をみせる。
対するクラウディアはそれまでの言に違わぬ仕事ぶりをここで果たす訳であるが、その世界の正しさは別として、自分の意思で歩む女性の姿を映す。そんな彼女が中心になって皆に振る舞うラストは、七人の侍の田植えシーンと重なる。
そんな下着の脱がせ方、そんな火の付け方など、ギミックも織り混ぜられて楽しい。確かに長回しが多くて睡魔にも襲われるが、最後まで堪能できる一本。

Kj