劇場公開日 2023年11月11日

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「映画界の新古今和歌集」夢二 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5映画界の新古今和歌集

2023年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

鈴木清順監督生誕100周年記念ということで、「大正浪漫三部作」と言われる「ツィゴイネルワイゼン」(1980年)、「陽炎座」(1981年)、そして本作「夢二」(1991年)の3作が4Kデジタルリマスターされて公開されたので、(スケジュールの関係で)まずは一番新しい「夢二」から観に行きました。

題名の通り画家の竹久夢二(1884年~1934年)の半生を描いているものの、内容的には虚実取り混ぜており、特に派手な女性関係が有名な夢二と交友があった女性として、彦乃(宮崎萬純)やお葉(広田玲央名)は実在したようですが、物語上最も重要な巴代(毬谷友子)は実在しなかったようです。

そして特徴的だったのは、極めて幻影的な映像が満載で、和歌で言うなら巧緻を凝らした新古今和歌集みたいな映画だったなと言うのが第一印象でした。また、劇中夢二の描いた絵や、作詞した「宵待草」の曲が効果的に使われ、この辺りはまさに半生記と言いうる作品でしたが、使い方の芸術点が非常に高く、「大正浪漫三部作」の掉尾を飾るにふさわしい作品でした。

俳優陣ですが、何と言っても主役のジュリーこと沢田研二が若くてカッコよく、とにかくゾクゾクとさせられました。昨年「土を喰らう十二カ月」では老成した作家を演じていましたが、本作ではギラギラしていた頃のジュリーそのものであり、懐かしさもあって痺れました。また、鈴木清順作品では常連の原田芳雄も、ジュリーとは対照的な野太い男の役を素のままといった感じで演じており、こちらも良かったと思います。ジュリーと原田芳雄の間で揺れ動いた巴代を演じた毬谷友子も、妖艶すぎて見惚れてしまいました。一瞬筒井真理子に似ているなと思いましたが、勿論全然違いました(笑)

それにしても、本作が制作されたのは1991年であり、平成に入ってからのこと。令和とは直接地続きの時代ではあるものの、今大正時代をここまで美しく、自然に再現できる映画が出来るかと考えてみると、中々出来ないんじゃないかなと思いました。勿論予算の関係もあるでしょうが、この30年余りで人も風景も日本が大きく変わってしまったため、もうこうした新作をお目に掛かることは出来ないのではと感じたところです。そういう意味では、非常に貴重な作品だと言えるかと思います。

そんな訳で、とにかく俳優陣も背景も含めて、映像全体が非常に綺麗な作品であり、100年前の時代に思いを馳せた本作の評価は、★4.5とします。

鶏