劇場公開日 1987年9月26日

「衣装とメイクの本気度に感嘆!」竹取物語(1987) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0衣装とメイクの本気度に感嘆!

2023年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

単純

寝られる

役者も豪華。
 でもって、主演が大根役者。シンデレラガールとして売り出し真っ最中。顔立ちも美しく、若尾さんの娘としても遜色なかった。お人形として愛でるには良いんだけど。
 演技力のなさを隠すための?日本美を極めた衣装・メイクやセットの雰囲気をぶち壊すような演出。しかも、沢口さんの所作ががさつで、声の出し方にも工夫がなく、残念。滑らかに動くとは程遠い。どたどたとした動き。皆を見回す流し目さえも。”宇宙人”だからこの演出なのか。この演技だから、”宇宙人”にしたのか。
 十二単の布は着物より堅そうだから(重ね着は出ているところだけ重ねてあって、本当に12枚も着ているようには見えなかったけど、帯の生地を着込んでいるように見える)、着られてしまっている感満載なのは仕方がないけれど。
 鬘も、若尾さんのは滑らかなのに、沢口さんのはごわごわのくせにおくれ毛が乱れまくっていて。メイクアップアーティストの腕の差かしら?
 衣装もメイクアップもセットも本気度MAX(加藤氏の随身姿を始め、ひな人形が動いている!!!)なのに、平安の雅に浸れない。
 昭和アイドルの演技力ってこんなものなのね。今みたいに、オーディション前にレッスン受けていた人なんて、少ないだろうし。(レッスン受けている人は、どこかの子どもプロダクションに属していたような)
 でも、今、子役を始め、高校生ぐらいの若手から演技力を評価されている人も多いので、全身がこそばゆくなってきてしまう。

かぐや姫を宇宙人に見立てる説は特に新しいものではない。漫画等ではすでにあったネタ。
 けれど、神・天女が、貧しくとも誠実な翁夫婦の元に降臨して幸せをもたらしたが、現世の欲にまみれた状況に耐えきれずに天に帰るという「鶴の恩返し」にも通じる解釈も好きだから、
露骨に宇宙船とか出てくるとちょっと鼻じらむ。この映画では「人間のまごころは忘れません」で、済まされてしまっているし。

元々、原作の求婚者を試す行為も好きじゃなかった。
 お金や権力にものを言わせて、何でも自分の思い通りにしようとする行為へのアンチテーゼという解釈で、だから帝にも従わない、「鶴の恩返し」と同じで欲にまみれ出した翁夫婦にも愛想尽かしたから帰るのならわかるんだけど。
 月に帰らねばならぬ身で、大納言との恋というのも、なんだかなあ。しかも、危険な旅に仕向けるし。愛を試すって何なのだろう。そして、運命は決まっているけど、それでも恋に押してしまって、恋しあうというのならわかるけど、いかんせん、主役の演技力ではそこまで深められないのが勿体ない。

そんな感じで、意欲は認めるけど、今ひとつ、登場人物のそうする必然性が感じられずに、不全感。

特撮はこの映画の売りだから、それに乗れるかどうかで評価は違ってくるかな。
 宇宙船の仕様は圧巻。Wikiに「『未知との遭遇』と同じでもいい」と社長(制作)がおっしゃったとあり、確かにパクリ感満載だけれど、日本らしいセンスも出ていて素敵。でも、登場の仕方とか、光線が走るところはもう少しどうにかならなかったのか。『ウルトラマン』ならあれでいいのだけれど。
 円谷氏が作っていたらどんなだったのだろう。そこも残念。
 市川監督は他にも撮っていて、打ち合わせに十分に参加できなかったとWikiにあった。だからか。衣装・メイクやセットをこれだけ史実を根拠に作り上げているのに、特撮の雰囲気が乖離している。もったいない。もう少し、”昔話”によれなかったのか。あえて、”SF”を強調したかったのか。

不朽の名作を汚しただけの作品になってしまったように思う。
それでも、衣装の美しさ、セットの造形等、それなりには楽しめるので、☆2つ。

とみいじょん