竹取物語(1987)

劇場公開日:

解説

〈かぐや姫〉の誕生から、月の世界に戻るまでをロマンスを織りまぜて描く。古来から伝わる物語の映画化で、脚本は「国士無双」の菊島隆三、映画評論家の石上三登志、「映画女優」の日高真也、同作の監督も手がけた市川崑の共同執筆。特技監督は「首都消失」の中野昭慶、撮影は「鹿鳴館」の小林節雄がそれぞれ担当。

1987年製作/121分/日本
原題:The Princess from the Moon
配給:東宝
劇場公開日:1987年9月26日

ストーリー

八世紀の末。都に近い美しい山里。行商人の宇陀が竹取の家へ行き、女房の田吉女がぼんやりとしているのを目撃する。わずかの金がないばかりにたった二、三日の患いで娘の加耶を亡くしてしまったのだ。夜、閃光が空を走り、何か巨大なものが大音響とともに竹林のある山に落下する。翌日、竹取の造は竹林へ行き、加耶の墓のそばで金属物体を見つけた。墓に向かって光線が走り、物体の中にいた赤ん坊が見るまに加耶そっくりの少女に変身する。だが、その瞳は青かった。小さな水晶球を握って離さない少女を、田吉女は天からの授かりものとして育てようと言い出す。金属物体を宇陀が彫金師のところへ持ち込み、それが混りけのない金であることがわかった。宮中の紫宸殿で朝議が行われ、山里の天変地異が話題になり、大伴の大納言がわが国ではとれない純金が出廻っていることを報告する。加耶が一日で、十七、八の娘になり、竹取の造は山里を離れた場所に豪荘な邸をたてて移り住む。加耶の美しさが近隣の評判になり、かぐや姫と呼ばれるようになった。安倍の右大臣、車持の皇子、大伴の大納言の三人が彼女に求婚する。近くの長老の家の子守りで、盲目の明野に相談し、世に得がたい宝物といわれる蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、竜の首の玉を持って来た人に嫁ぐという条件を出した。三人はそれぞれ船を仕立てて出発していった。満月の夜、水晶球を通じて加耶が月から来たことがわかった。車持の皇子、安倍の右大臣はいずれも偽物をさし出し、大伴の大納言は竜に襲われてしまう。水晶球から通信が入り、次の満月に月から迎えにくるという。帝は自分の威信にかけ、月からの使者を阻止せよと藤原の大國に命じる。満月の夜、巨大な宇宙船が月から飛来した。兵士の射る矢は何の効果もなかった。加耶は宇宙船のなげる光線の中に入って上昇していく。明野の月が見えるようになり、大伴の大納言は「かぐや姫、きっとまた会える」とつぶやくのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第11回 日本アカデミー賞(1988年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 市川崑
助演男優賞 三船敏郎
音楽賞 谷川賢作
新人俳優賞 小高恵美
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映画レビュー

2.0衣装とメイクの本気度に感嘆!

2023年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

単純

寝られる

役者も豪華。
 でもって、主演が大根役者。シンデレラガールとして売り出し真っ最中。顔立ちも美しく、若尾さんの娘としても遜色なかった。お人形として愛でるには良いんだけど。
 演技力のなさを隠すための?日本美を極めた衣装・メイクやセットの雰囲気をぶち壊すような演出。しかも、沢口さんの所作ががさつで、声の出し方にも工夫がなく、残念。滑らかに動くとは程遠い。どたどたとした動き。皆を見回す流し目さえも。”宇宙人”だからこの演出なのか。この演技だから、”宇宙人”にしたのか。
 十二単の布は着物より堅そうだから(重ね着は出ているところだけ重ねてあって、本当に12枚も着ているようには見えなかったけど、帯の生地を着込んでいるように見える)、着られてしまっている感満載なのは仕方がないけれど。
 鬘も、若尾さんのは滑らかなのに、沢口さんのはごわごわのくせにおくれ毛が乱れまくっていて。メイクアップアーティストの腕の差かしら?
 衣装もメイクアップもセットも本気度MAX(加藤氏の随身姿を始め、ひな人形が動いている!!!)なのに、平安の雅に浸れない。
 昭和アイドルの演技力ってこんなものなのね。今みたいに、オーディション前にレッスン受けていた人なんて、少ないだろうし。(レッスン受けている人は、どこかの子どもプロダクションに属していたような)
 でも、今、子役を始め、高校生ぐらいの若手から演技力を評価されている人も多いので、全身がこそばゆくなってきてしまう。

かぐや姫を宇宙人に見立てる説は特に新しいものではない。漫画等ではすでにあったネタ。
 けれど、神・天女が、貧しくとも誠実な翁夫婦の元に降臨して幸せをもたらしたが、現世の欲にまみれた状況に耐えきれずに天に帰るという「鶴の恩返し」にも通じる解釈も好きだから、
露骨に宇宙船とか出てくるとちょっと鼻じらむ。この映画では「人間のまごころは忘れません」で、済まされてしまっているし。

元々、原作の求婚者を試す行為も好きじゃなかった。
 お金や権力にものを言わせて、何でも自分の思い通りにしようとする行為へのアンチテーゼという解釈で、だから帝にも従わない、「鶴の恩返し」と同じで欲にまみれ出した翁夫婦にも愛想尽かしたから帰るのならわかるんだけど。
 月に帰らねばならぬ身で、大納言との恋というのも、なんだかなあ。しかも、危険な旅に仕向けるし。愛を試すって何なのだろう。そして、運命は決まっているけど、それでも恋に押してしまって、恋しあうというのならわかるけど、いかんせん、主役の演技力ではそこまで深められないのが勿体ない。

そんな感じで、意欲は認めるけど、今ひとつ、登場人物のそうする必然性が感じられずに、不全感。

特撮はこの映画の売りだから、それに乗れるかどうかで評価は違ってくるかな。
 宇宙船の仕様は圧巻。Wikiに「『未知との遭遇』と同じでもいい」と社長(制作)がおっしゃったとあり、確かにパクリ感満載だけれど、日本らしいセンスも出ていて素敵。でも、登場の仕方とか、光線が走るところはもう少しどうにかならなかったのか。『ウルトラマン』ならあれでいいのだけれど。
 円谷氏が作っていたらどんなだったのだろう。そこも残念。
 市川監督は他にも撮っていて、打ち合わせに十分に参加できなかったとWikiにあった。だからか。衣装・メイクやセットをこれだけ史実を根拠に作り上げているのに、特撮の雰囲気が乖離している。もったいない。もう少し、”昔話”によれなかったのか。あえて、”SF”を強調したかったのか。

不朽の名作を汚しただけの作品になってしまったように思う。
それでも、衣装の美しさ、セットの造形等、それなりには楽しめるので、☆2つ。

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とみいじょん

4.0格調高いSFという稀有な作品

2019年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

竹取物語をSF仕立てにした映画、これは日本人なら見ないといけないだろう、なんといってもエイリアンものとしては世界に誇れる最古(8世紀)のお話なのだから。
B級パロディだと月世界人をバニーガールに仕立てかねないが、東宝が55周年記念作品として作っただけに大真面目、役者からスタッフまで超豪華な顔ぶれ、衣装もワダエミさんというこだわり様、未知との遭遇にも劣らない眩い宇宙船の登場、東宝SFでは人間側の話はおまけになりがちだったがさすが名匠市川昆監督、抜かりはありません、素晴らしい新解釈のファンタジーにしてくれました。

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odeonza

3.0市川×東宝特撮“かぐや姫の物語”

2018年7月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

単純

近作だと故・高畑勲の遺作。
古来から日本人お馴染みの“かぐや姫”。
円谷英二の念願だった企画を、市川崑が映画化。
製作に田中友幸、特技監督に中野昭慶。
市川組と東宝特撮組が豪華タッグ。
市川崑らしい映像美。豪華絢爛な美術・衣装。
製作費20億円をかけ、国内で作られた同作ではおそらく最大規模。
巨大竜やその他諸々の特撮、当時の最新SFXを駆使したクライマックスの『未知との遭遇』ばりの巨大宇宙船など、中野昭慶の腕の見せ所。
本作は市川作品であると同時に、れっきとした東宝特撮作品の一本でもある。

話自体は誰もが知っているので、今更説明する必要ナシ。
ユニークなのは、他の同作品との相違点。
何と言ってもその最たるは、かぐや姫は宇宙人だったという設定。
幼少時の青目のかぐや姫や、本来御所車と天女である月からの迎えが巨大宇宙船になるなど、純日本的物語に西洋風のSF要素が取り入れられ、また違った“かぐや姫”になっている。

映像や特撮は見事だが、ドラマ部分は…。
かぐや姫の心情を事細かに描いた高畑勲版を見た後だと、どうしてもドラマ的に弱い。
かぐや姫はあっという間に成長するし、昔ながらの運命に身を任せる典型的な女性像。
育ての父母との愛情、美や宝の虜になった人々の欲など描かれているものの、今一つ深みが足りない。
ドラマ部分も見事だったら、ひょっとしたら傑作になっていたかもしれない…。

市川作品の代名詞でもあるオールスターキャスト。
日本映画界を代表する圧巻の顔触れだが、三船敏郎らの演技がちと芝居ががってるのが気になる。

作品の出来としてはまずまず。
日本人に語り継がれる馴染み深い物語と贅沢な映像世界だけでも堪能出来れば。

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近大
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